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第278話 番外編 かすみ草

滞りなく卒業式が進んでいって…るはずなんだけど、複数の生徒がちらちらと後ろを振り返り、保護者席の辺りも、少し騒ついてる気がする。両脇に並んで立つ先生の中にも、隙をみては、保護者席に視線を向ける人もいる。 ーーまあ、あんな目立つ集団がいたら、気になって仕方ないよね…。兄ちゃん、あんな華やかな集団の中にいて、大丈夫かな…。 俺は少し心配になり、そっと後ろを向いて首を伸ばした。その瞬間、銀ちゃんと目が合って、綺麗な笑顔で微笑まれる。俺は慌てて前を向くと、熱くなった頰を袖で擦って俯いた。 銀ちゃんの顔は、毎日いっぱい見てる。朝なんて目覚めるといつもどアップで、俺の顔にキスをしまくっている。俺だけに見せる綺麗な笑顔だって、充分見慣れてるはずだ。 だけど、いつまでたっても銀ちゃんは、俺をどきどきとさせるんだ。 さっきの見慣れたはずの笑顔で、俺の胸がきゅーっと締めつけられて苦しい。 ーーさっきの笑顔…。ヤバかった。超かっこいい! あの人が俺の旦那様なんだと思うと嬉しくなって、今度は顔がだらしなく緩んでしまう。俺は、ニヤける顔を真顔に戻そうと、頰を軽く摘んだ。 卒業式が終わって教室に戻る。 先生が来るまでの休憩時間に、銀ちゃんからメールが入った。 俺はメールを読んで、弾んだ声を出した。 「清、倉橋、今日は清ん家でお祝いだって!やったぁっ。いっぱい食べて、楽しく過ごそうなっ。あ、でも、場所は清ん家でよかったの?」 清忠と倉橋も、制服のポケットからスマホを出して確認する。 「あ、ホントだ。兄さんからメールがきてる。うちが一番広いし、右近と左近が料理が出来るから、兄さんが誘ったみたいだよ。だから気にしなくていいし。いいじゃん!楽しもうっ。あ、茉由ちゃんにも声かけていい?」 「宗忠さんが?そっかぁ、ありがと。うん、呼んであげなよ。たくさんいた方が楽しいし」 「うん。さっそく聞いてみる」 「あ…。白から、先に行って待ってるから早く来いってメールきてるわ」 「「…えっ?」」 見事に清忠とハモってしまった。 清忠はメールを打つ手を止め、俺は固まって倉橋を見つめた。 「ん?」 「え?あの…、白様ってメールするの?」 「え?何それ?念力?念を飛ばしてメール送ってきたのか?」 倉橋が、俺と清忠を交互に見て声を出して笑った。 「あははっ、真葛はおもろい事言うな。椹木も驚き過ぎやで。念力ってなんやねん。白がスマホを使いたいって言うから、一番操作が簡単なやつを渡してんねん。白は何でも出来そうに見えて意外と不器用でな、メールを打つのが遅い。でも、ちゃんと使いこなせてるで」 「「へぇ〜…」」 あの白様が、スマホを弄ってる姿が想像出来ない、と清忠と間の抜けた顔をして、間の抜けた返事をした。

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