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第279話 番外編 かすみ草

最後のHRが終わり、クラスメイトに声をかけたり写真を撮ったりしてから、清忠と倉橋の3人で玄関に向かった。 玄関では加瀬さんが待っていて、清忠と写真を撮りまくっている。 倉橋も、加瀬さんと一緒にいた女の子に写真を頼まれていた。 俺は、通り過ぎるクラスメイトや友達と喋りながら壁際に立って2人を待っていた。すると、俺の前に小柄な女の子が来て、スマホを握りしめて俺を見ている。俺が首を傾げると、彼女が赤い顔をして口を開いた。 「あ、あの…っ、一緒に写真、撮ってもらっても…いいっ?」 「え?あ…え?俺?…う、うん、いいよ」 「あっ、ありがとう!」 彼女がとても喜んで、満面の笑みで俺の隣に並び、傍にいた友達に頼んで写真を撮った。 彼女がお礼を言って去った後に、そろそろ清忠と倉橋も撮り終わったかな…と、2人の元に向かおうとした。その時、制服の裾を掴まれて不思議に思って振り向くと、さっきとは違う別の髪の長い女の子がいた。 結局俺は、最初の小柄な女の子と髪の長い女の子、それにあと3人と、頼まれて写真を撮った。 意外に俺もモテるじゃん…っ!と感激したけど、最後に写真を頼んできたのは、男だった…。なんで? 最後の1人がなぜ俺と写真を撮ったのかが謎で、しきりに首をひねっていたら、清忠に肩を掴まれた。 「凛ちゃん…。モテモテだったね…」 「椹木は昔から人気があったで。恋人がいるって噂があったから、皆んな遠慮して声かけへんかっただけや」 「え〜?そうだったんだ。俺、知らなかった…」 「…これを一ノ瀬さんが知ったらどうなるか…」 「銀ちゃんはこんな事で怒らないよ。清こそ、変な事口走ったら怒られるよ?ねぇ、それより加瀬さんはどうしたの?」 「茉由ちゃんは、今日は友達と打ち上げに行く約束してたんだって。まあ、休みの間は、ほぼ毎日会う予定だからいいよ」 「清、ラブラブじゃん!ふふ、幸せそうで何より」 「凛ちゃんだって一ノ瀬さんとそうだろ?あっ!そうだっ、思い出したっ。なぁ倉橋、白様、卒業式に来てたよなっ?」 玄関を出て門へと歩きながら、清忠が倉橋に聞く。 「そうやねん…。俺の母親も来てたから、別に来なくていいって言ったんやけどな。俺の晴れ姿を見たいって。なんか、ここ1年、白の様子がおかしいねんな…」 「えっ?そうなのか?はっ!もしかして寿命…」 「清っ、失礼な事言ってるよっ」 「ははっ。白に寿命はないよ。なんやろなぁ…。常に俺の傍にいようとするねんなぁ」 「ええ…、俺、あの神使にずっと傍にいられたら、ストレスで死ぬかもしれない…」 「そんな事、言わんといたって。白は真葛のこと、結構気に入ってるで」 「え?マジで?そ、そう…。俺…今日、話しかけてみようかな…」 「ふふ、そうしたって」 そんな他愛のない話をしながら電車に揺られ、俺は一旦家に帰る為に、電車を降りた。

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