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第282話 番外編 かすみ草
清忠の視線に気付いた白様が、ぎろりと睨む。
「なんだ、清忠?じろじろと見るな」
「え?…はっ!す、すいませんっ」
清忠が即座に謝ったけど、やっぱり気になるのか、また2人を見つめている。
「白、そんなに偉そうに言ったらあかん。で、真葛はどうしたん?」
「…う…あ〜…、なんか、白様、倉橋には優しくね?」
清忠の質問に、また白様がぎろりと清忠を睨む。
「当たり前だろう。蒼は私の大事な愛し子だ。おまえと同じではない」
「愛し子っ?」
いよいよ訳がわからなくなってワタワタとする清忠に、倉橋が苦笑しながら言った。
「ほら、俺は生まれた時から白の傍にいるから。子供みたいなもん?」
「違うぞ、蒼。おまえはいつも私に『白がいるからええねん』と言ってくれるだろう。私もそうだ。蒼がいてくれたらそれでいい。いや…私が蒼の傍にいたいのだ。長らく考えていたのだが…、私は神使の役目を降りる事に決めた。だから蒼…私と同じ時を共に生きてくれないか?」
「……」
突然の白様の告白に、談笑していた皆んなも、黙って2人を見た。しん…と静まり返った部屋で、全員固唾を飲んで見守る。
しばらくして、倉橋がぽつりと話し出した。
「…物心ついた頃から、白は俺の憧れでな…。朝起きて、白に会えると思うだけで、その日一日はとても幸せやった。この世界に白がいるから、周りに何を言われても避けられても気にならんかった。でも、いつかは俺も白が見えなくなるんかな…って怖くも思ってた。それに白は、まあ言うたら神様みたいなもんやし?俺といつまでもいてくれへんよなぁ、って…自分の気持ち、抑えとった。なぁ白…ほんまに?俺とずっといてくれるん?」
「ああ…、私は蒼が何よりも大切だ。もう一度言うぞ。蒼、私と共に生きてくれるか?」
「…うん、ええよ」
真っすぐに白様を見て微笑む倉橋が、とても綺麗だと思った。
一拍置いた後に、周りから祝福の声が上がる。
皆んなのおめでとうの声に、倉橋は笑顔を、白様は照れ隠しなのか渋い顔を見せていた。
そして、手を叩きながら「おめでとう」を連呼する清忠を、白様が再度ぎろりと睨んで「うるさい」と吐き捨てる。
「なんでっ?」と涙目でぼやく清忠が不憫になってきて、俺は倉橋に、「白様に、清忠にも優しくするように言ってあげて…」と懇願した。
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