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第283話 番外編 かすみ草

倉橋が白様と正面から向き合って、こんこんと説教をしている姿を見て、思わず笑みが零れる。 「ふふっ、倉橋の方が強いみたい。白様、尻に敷かれそうだね」 隣に座る銀ちゃんに寄り添って、そっと囁いた。 銀ちゃんは、目を細めて俺の頰を指で撫でる。 「うちだって、おまえの方が強いじゃないか。俺は、おまえには敵わないからな」 「俺は尻に敷いてないよ。銀ちゃんが、優しいだけだよ」 「そうか…」 銀ちゃんの手を弄りながら話していると、視線を感じてふと顔を上げた。机を挟んだ向かい側から、兄ちゃんが俺をガン見していた。 「な、なに?兄ちゃん…」 「ハッ!あ、悪い。いやぁ…いつ会っても、おまえと銀さんはラブラブだな〜と思って」 「に、兄ちゃんだってそうだろ。ね、茜さんっ」 「……え?あ、そっ、そうよ!…ふぅ…、銀様といる時の凛があまりにも可愛いから見惚れてしまったわ…」 「はぁ?凛なんかより茜の方が可愛いに決まってるじゃん」 「やだぁ、もう蓮ったら…。ありがとう」 兄ちゃんの肩に、コテリと頭を乗せる茜さんが可愛い。だけど、身内のラブラブを見るのは中々に恥ずかしいものだ。…はっ、そうかっ。兄ちゃんもこんな気持ちで俺と銀ちゃんを見てたのか…。 ふと申し訳なくなって、チラリと兄ちゃんを見る。兄ちゃんは、俺の視線に気付くと、なぜか申し訳なさそうな顔をした。 「凛、父さんと母さんが来れなくて残念だったな」 「え?ああ、俺は別に気にしてないよ?兄ちゃんと茜さんが来てくれたし。それに銀ちゃんもいるし」 「そっか。まあ、して欲しい事とかあったら、俺に頼れよ?父さん母さんは、まだ海外勤務から帰れそうにないしさ」 「うん、わかった。ありがと」 「凛、私にも頼ってね?」 「ありがと、茜さん」 俺がにっこり笑って茜さんにもお礼を言うと、蕩けそうな笑顔を返してくれた。 「え〜…、皆んな幸せでいいね…」 黙々と食べる事に集中していた浅葱が、いつの間にか俺と倉橋の間に座っていて、溜め息を吐いた。 「俺にも、唯一の大切な人が現れないかなぁ…」 正座して、ぽつりと呟く浅葱の肩を、ぽんぽんと叩く。 「焦らなくても大丈夫だよ。浅葱はかっこよくて優しくて話も面白いから、きっと最高の相手が現れるよ」 「そう…?ありがと」 浅葱がにこりと笑って、俺の手をぎゅっと握った。 「ふふ…、幸福のお裾分け。とりあえず今は、ラブラブの凛と銀様を見てるだけで俺は幸せだよ」 「ふふ、なにそれ」 「勝手に幸せになってくれて構わないが、そろそろ手を離そうか」 「…はいはい、すいませんね。皆さん、今から写真を撮ります。白様の周りに集まって下さい」 浅葱の提案に、皆んな席を立って床の間の前に集まる。前列に、今日卒業した3人と白様が座り、後列に残りの4人が並ぶ。当然銀ちゃんは、俺の後ろを陣取って、膝をつき、俺を抱きしめるように腕を回している。 「はーい、撮りますよ〜」 浅葱が声をかけて、スマホを構えて連写する。途中で兄ちゃんが交代して、浅葱が入って写真を撮った。 この写真は、大事に写真立てに入れて、よく見える場所に飾ってある。 皆んな、俺の大切な友達で家族だ。 …end.

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