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「ナギ……?」 「ば、か……やめて、って……いったの、に……」  真白の肌は紅く染まり、吐息は熱を帯び。椛がラインヴァルトの肩に額を預けて呼吸を整えようとすれば、そのうなじが晒されて色香を醸し出す。 「ごめん、ナギ……こんなつもりじゃなかったんだけど」 「あっ……」 「ごめん……」  ラインヴァルトははだけた椛の身体を見て、は、とひとつ吐息を零した。そして、鎖骨に唇を寄せ、静かに舐める。親指でそっと胸の突起を撫でると、椛は手の甲を噛んで目をとじた。 「ナギ……」 「だめ……ライン……だめ……」 「ナギ、」 「あっ……、そこ、や……」  舌先で、乳首をつついてやる。片側を指でも優しくいじめながら、唇で食んでやると、椛はラインヴァルトの頭を抱えながらのけぞった。舌を動かすたびにぴく、ぴく、と小さくその身体は揺れて、ひどく淫らで、ひどく愛しい。  胸が苦しくて、息ができなくて。ラインヴァルトに触れられるたびに頭の中を快楽が突き刺して、わけがわからなくなる。ぽろぽろと零れる涙は、なんのために流れているのだろう。 「おねがい……ライン、やめて……いっちゃう……いっちゃうから……」 「……うん、ナギ……ごめん」 「やだぁ……あっ、あぁ……!」 「ナギ、好き……」 「あっ、あっ、だめぇ……あ……!」  自分を守るように唇からは否定の言葉がでてくるけれど、いつのまにか腕はラインヴァルトを抱いていた。触れられるたびに弾ける熱を身体も、心も、きっと……求めている。 「ライン……」  手のひらを合わせ、指を絡め。名前を呼ぶとラインヴァルトはもう一度キスをしてくれた。今度は躊躇わずに舌を交わらせ、椛は必死にそのキスに応えようとした。 「ライン……僕……」 「うん……」 「王子ー! ライン王子ー! どこですか! またこの塔の上ですかー!」  ぴたりと空気が固まった。ラインヴァルトはガバっと体を起こすと、慌てて小窓から顔を出して地上を見下ろす。 「まずい、また臣下が俺を探している! 悪い、ナギ、俺帰らないと……!」 「う、うん……」  ラインヴァルトは乱れた服を整えると、小窓の縁に脚をかける。ホッとしたような、どこか残念なような……そんな複雑な気持ちで椛は彼を見つめていた。そんな椛の気持ちをラインヴァルトは汲んだのだろうか。ふっと笑うと、優しい声で言う。 「……明日も会えるよ。ナギ」 「……明日も、くるって、こと?」 「うん」 「……そっか……」  なんだか、心臓をノックされたような。とくんと柔らかな音を立てて、甘い果実が心の中ではじけた。勝手に緩んだ口元を見られるのがいけないことのような気がして、椛は俯いて顔を隠す。頬がぽっ、ぽっ、と火照ってきて、恥ずかしくなってくる。 「ナギ、じゃあね。ごめんね、俺、本気でナギのこと好きになっちゃった。だから、明日も、明後日も……ナギに会いにくるからね」 「……あ、そう、……ですか」 「はは、……うん。また明日!」 「……はい」  わざと素っ気ない言葉を返してみたけれど。きっとラインヴァルトにはすべてバレているだろう。本当は明日も明後日も、椛がラインヴァルトに会いたいと思っていること。ラインヴァルトが降りていった小窓に近づいていって彼の後ろ姿を追おうとしては、そんなことをしてラインヴァルトにその姿が見つかれば意地をはっていたことがバレてしまうとそう思い直して慌てて顔を引っ込める。そんな自分の姿を可笑しいと嘲笑いながら、それでも椛は、心のどこかで自分の知らない幸せを感じ始めていた。

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