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「……っ、ふ」
胸元で小さく主張していた突起をヘンゼルが口に含むと、椛はびくりと身体をしならせた。ベッドの軋みが気になったヘンゼルは椛の身体を、暴れないように押さえつける。
「んっ、んっ、……ふ、っ……!」
口の中でころころと乳首を転がして、乳頭に唾液を絡ませる。椛はヘンゼルの頭を抱きしめるようにしながら仰け反って、必死に快楽に耐えていた。くぐもった声とつま先がシーツを掻く音が、ひたすらにヘンゼルを苛める。
「んん~ッ……! ん、んっ……」
ああ、妙に艶かしい。自分の舐めたところがてらてらと光る真白な肌。くねるたびに畝る身体の陰影。痛々しく散る鬱血痕。肋骨の溝、臍、そろそろと舐めてゆけば揺れる身体。目に毒だ、淫売の弟への嫌悪感と相反して生まれゆく確かな興奮に、ヘンゼルはひどく鬱屈とする。
「……まだやるの」
「……まだ、全部、舐めてないでしょ……?」
「……ッチ」
ヘンゼルはゆっくりと、椛のボトムスを剥いでゆく。下着もなのか、と目で尋ねるように睨んでやれば、潤んだ瞳で見つめ返されたから、下着も一緒に一気に脱がせてやった。
「……ッ」
ぱく、ぱく、と呼吸をするように動く椛の脚の間の孔から、ヘンゼルは思わず目を逸らす。立ち上がった椛のものの先からは先走りがとろとろとあふれていて、しばらくすれば自らそれで孔を濡らすのだろう。あまりにも淫靡なその光景は、なんとなく見てはイケナイもののような気がして、それから逃げるようにヘンゼルは椛の太ももに唇を寄せた。細いのに柔らかく、すべすべとした太もも。脚を掴んで開いてやって、その間に体を滑り込ませて太ももの内側を唇で食む。痕はつけないように軽く吸い上げて、肉の感触を味わうようにゆっくりと。
「んっ……」
ぴく、と太ももが震える。は、と見上げれば、椛はいじらしくもヘンゼルに言われたとおりにカットソーを噛み続けているのが視界に入る。
「……にい、さん……」
ぐずぐずと濡れたその瞳と視線が交じる。同時に視界に入る、ぴくぴくと動く濡れた孔。
「……」
この排泄器官は、こんなにも艶かしいものだっただろうか。先走りに濡れててらてらと光を反射し、はくはくと物欲しげに動いている。男同士でセックスなんてなにがいいんだとばかり思っていたが、これをみるともしかしたら悪いものでもないのかと、そんなことを思ってしまう。
「……そこも、舐めろとか言うんじゃないだろうな」
「……やだ?」
「嫌に決まってんだろ」
「どうしても……? 兄さん、兄さんに、優しく触れられたい」
(ほんとなんなんだよコイツ……)
ぴくぴくと動くソコから目を逸し、ヘンゼルはため息をついた。
「……後ろ向いて。こっちにケツつきだして」
「……はい」
「……指で触るだけな」
涙でぐずぐずになった表情と、限界と言わんばかりにたちあがった椛のそれをみて、中途半端に放っておくのも悪いかと、しょうもない罪悪感が働いた。ヘンゼルはしぶしぶ承諾して、椛が体勢を変える様子をぼんやりと見つめていた。
椛がそろそろと起き上がって、ヘンゼルに臀部を向けて四つん這いになる。そして上半身を伏せて、臀部を突き上げるような格好をとった。僅か脚を開いていることもあってか、その孔はくっきりと姿をあらわしている。空気とヘンゼルの視線に撫でられて、孔はぴくぴくと細かく動いていた。
「はぁ……」
なんでこんなことになったんだっただけ、と現実から目を背けたくなりながらもヘンゼルは自らの人差し指を軽く舐める。そして、臀部の割れ目を指の先でなぞった。
「はぁぁ……ん、」
椛はため息のような声をあげる。何度か往復してやると、今度は孔の周囲をくるりと円を描くように撫でてやった。孔の動きは一層はやくなっていき、椛はぎゅっとシーツを掴んで快楽に耐えている。
「あぁ、あっ、やぁー……」
「いい?」
「いい、兄さん……きもち、いい……」
「あ、……っそ」
指先に、椛の先走りがまとわりつく。ぬるぬるとしたそれを孔に塗りたくるようにして、しつこくそこを弄ってやった。
「はぁ……あぁあ……」
指の腹で孔の入り口を塞ぐようにしてぐりぐりと触ると、椛がたまらないと言うように首をふる。その髪をぱさぱさと揺らしながら頬を枕に押し付けて、つま先でシーツを引っ掻いた。かさかさとシーツの擦れる音が妙に生々しくヘンゼルを責め立てる。
「やあぁん……だめ、だめぇ……」
「……いつもこの奥にぶっといの挿れられている癖に」
「あっ……」
ヘンゼルが罵倒にも似た言葉を吐いた瞬間、椛の孔がきゅうっと締まった。なんとなくその理由を察したヘンゼルは呆れ顔でぐいぐいと指を動かしてやる。
「……今のでおっさんにヤられている時のこと思い出したわけ?」
「あッ……ち、ちがう、の……」
「じゃあなんだよ」
「……、ほし……ほしく、なっちゃった……兄さん……」
椛が振り向いて、肩越しに見つめてくる。濡れた瞳がランプに照らされて、ゆらゆらと光と泳がせている。
――こうやって、いつも誘惑してるんだ
「――あぁッ!」
なにかが気に障ったヘンゼルは苛立ちに任せてそのまま指を中に押し進めた。つぷぷ、と小さな音をたてて指が沈んでゆく。
「おまえさぁ、俺のところ嫌いなんじゃないの? 俺とセックスしたいって? 頭おかしいの?」
「あっ、あっ……! だっ、て……にい、さん……やぁっ……!」
「おまえとヤッて俺になんのメリットがあるんだよ」
「っ……に、いさん……」
ヘンゼルが言葉を発するたびに肉壁はきゅうきゅうとヘンゼルの指を締め付けた。ほんの少し中で指を動かしてみれば、椛が身体をくねらせて甘い声をあげる。
「にいさん、だって……にいさん、やさしいの……」
「は? おまえに優しくしたおぼえないけど」
「あっ、んぁ……ううん、にいさん……いつも、僕のこと、気にかけてくれる……」
「はっ……今更なんだよ、そんなこといつも言っていないくせに。あと、別におまえに優しくしようとなんて思ってない。同じベッドで寝るのに言葉も交わさないのもアレだと思って、適当な言葉かけてるだけだから」
「だって……じゃあ、なんでこんなに優しく触るの……!」
こり、と中の小さな膨らみに指先が触れると、椛は甲高い声で啼いた。びくんっ、と身体が跳ねる。
「はぁ……何を勘違いしてんだかしらねぇけど……こういうことするのに抵抗あるからベタベタ触りたくないだけだよ」
「だったら……あっ、断って、よ……」
「そうするとおまえがまた落ち込むんだろめんどくせえな」
「……いやなのに、僕のためにしてくれてるんだから、にいさんは優しいんだよ」
「……」
ウザい。手のひら返したように、急になんだってんだ。
「あっ……! ひゃあぁっ……!」
椛の反応が良かったところを、強く押し込むように掻いた。さっさと終わらせよう、そんな気持ちでヘンゼルは手の動きをはやめる。
「やっ、あっ、い、いっちゃ……」
「イけよさっさと。はやく俺は終わりたい」
「あぁ、ん、に、にいさん……」
「なに」
「……きす、キスして……」
「……」
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