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「舐めて」 「……!」  ヴィクトールがゆっくりとヘンゼルの首の上に跨がり、ペニスの先端を唇にあてた。縛られベッドに転がされた状態のヘンゼルは抵抗する術がない、するつもりもない。目の前に差し出されたそれに、これから咥内を犯されるのだと思うとバイブを飲み込んだアナルがきゅんとする。ヘンゼルは素直に口をひらき、震える濡れた舌を突き出す。 「……いい子」 「んっ……ん!」  ず、とそれが口の中に入ってくる。まだ完全に勃っていないためか、口の中は余裕があった。ヘンゼルは歯をたてないように唇でソレを咥え、ヴィクトールを見上げる。これからされることは想像がついた。この口を…… 「んっ、んっ!」  この口を、まるで女性器のように犯されるのだろう。ヴィクトールがヘンゼルの後頭部に手のひらを添えて持ち上げ、腰を振る。……興奮した。完全に身体の自由を奪われ、アナルにはバイブを挿れられ、そして顔に跨がられてイラマチオをされる。ヴィクトールはまだ理性を効かせて、ヘンゼルの喉にあたらないように加減をしながらやってはいるが、唾液の分泌のコントロールがきかなくて唇からだらだら零れてしまうし、呼吸もまともにできないし、ということで苦しかった。被虐心が沸々と湧いてきて、もっと虐めて欲しいなんて、思ってしまう。 「ヘンゼルくん、頑張って……足りないよ。もっと、君のアナルみたいに締め付けてよ」 「んん……ッ! ん、ん!」  もっとヴィクトールのために頑張りたい……そう思ったが、うまくいかない。ずぶずぶと遠慮無く挿入を繰り返されて、口が動かない。舌先だけを、なんとか動かすことが出来る程度。 「ヘンゼルくん……そう、いいよ……少し、激しくするからね」  涙を流しながらも懸命に舌を動かして奉仕しようとしてくれているヘンゼルをたまらなく愛おしいと思う。それゆえにもっと激しくしてやりたい。自分にだけは淫乱になってくれる彼へ最高のプレゼント。痛む良心も今や興奮を煽るものとなり、ヴィクトールはぐいっとヘンゼルの頭を引き寄せる。 「んッ……!」  喉をついてしまったのだろう、咽そうになって苦しげな表情をしたヘンゼルに、もうひと突きおみまいしてやる。とうとうゲホゲホと喘ぎ始めたが、それでも思い切り突いてやった。愛しているのに、その苦しそうな表情に興奮する。ペニスは更に熱をもって、膨張し、ヘンゼルを苦しめる。  ちらりと振り返りヘンゼルの下腹部を見てみれば、精液で白く濡れていた。こんなに酷いことをされて感じてまた出したのか、よくここまで調教できたなとヴィクトールは自分自身に関心してしまう。初めの頃はキスをしようとしただけで拒絶されたのに……と考えると感慨深くなって更に愛おしい。 「ヘンゼルくん、僕の、美味しい?」  顔が涙と唾液に濡れ、快楽で真っ赤になったヘンゼルにたずねてみる。一旦ピストンを止めてやれば、小さくコクリと頷いて、目を閉じる。もっとして、と言っているように。  ああ、本当に可愛い。僕だけのヘンゼル。離すもんか、何が相手だって、絶対にヘンゼルを僕のもとに留めてやる。 「ん……ふ、ぁ」  ヴィクトールはヘンゼルの口からペニスを引き抜いた。すっかり唾液で濡れたペニスがぬらぬらとテカり、艶かしい。もういいの?と尋ねるようにぼんやりと見つめられ、ヴィクトールは微笑む。 「ありがとうヘンゼルくん、気持ちよかった」 「ごめ……おれ、ぜんぜん……」 「ううん」  責め苦から解放された第一声が、上手くヴィクトールに奉仕できなかったことへの謝罪。あんなことされて奉仕もなにもできるわけがないのに、まったくどこまでも可愛い。愛おしくて愛おしくて、キスをしてやると、ヘンゼルは首をぐっと伸ばして必死に求めてきた。目を開けてみれば、本当に嬉しそうな顔をしていて、キュンッと胸が締め付けられる。 「ヘンゼルくん……そろそろ気持ち良くしてあげるからね。僕とひとつになろう」 「……! ほんとに?」 「嬉しい?」 「うん……」 「いっぱいイかせてあげる」  ぐずぐずになったヘンゼルのなかに挿れられると思うと、ヴィクトールはまた興奮してしまった。感じているときのヘンゼルのなかはぎゅうぎゅうに締め付けてくれるから、本当に気持ちいい。  ヴィクトールはヘンゼルのアナルにずっぷりと挿さったバイブの持ち手に手をかける。そのままチラリとヘンゼルを見てやれば、ゆっくりぬいて、と目でうったえられる。 「じゃあ、抜くからね」 「ゆっくり……」 「やだ」  ふふ、とにっこりと笑って意地悪を言ってやる。すごいのがくる、と恐怖と期待に染まってしまったその顔も、可愛い 「いくよ?」  そして。 「あっ……ひ、ぁあぁああッ……!」  一気にズルルルルッと抜いてやると、ペニスをぴくぴくとさせ、先からぴゅっと精液を出し、身体を仰け反らせ、ヘンゼルはまたイってしまった。 「ヘンゼルくん……可愛い……」  バイブの抜いたアナルはぽっかりと穴が空いて、ひく、ひく、と生きているように小さく動いている。ヴィクトールはそこにペニスの先端をあてがい、ゆっくりと腰を進めた。 「あ……あ……」  ずぶ、と抵抗もなくそこはペニスを呑み込んでゆく。奥へ近付くたびにヘンゼルは眉をよせ、悩ましげな表情で喘いでみせた。すべてはいって、ヴィクトールが腰骨を打ち付けるようにグッと腰を押し出すと、ビクンッとヘンゼルの身体がしなる。 「んっ、ぁあッ!」  もう何度も何度もイって、ヘンゼルの身体は全身性感帯と言ってもいいくらいに敏感になっていた。ちょっとした刺激ですぐにイってしまいそうになる。強く突かれて身体を揺すられると、全身がびりびりとして頭が真っ白になる。ヴィクトールがヘンゼルの脚を掴んでピストンをはじめると、ヘンゼルをうねるような強烈な快楽が襲う。内臓が叫んでいるような、わけのわからかい気持ちよさに、ヘンゼルはただただ声をあげることしかできない。拘束された身体では快楽から逃げるように身体をよじることすらできないのだ。 「あぁあっ、ああッ、ん、ぁアッ」  狂ってしまうんじゃないかと思った。本当に、気持ちいい。いっそ苦しさすらも感じるほどの快楽でも、ヴィクトールから与えられるものだと思うと胸がいっぱいになる。涙で濡れてぼやけた視界に、なんとかヴィクトールを映しだすと、愛おしげに見つめられていて、アソコがきゅんと疼いた。ビクンと身体が跳ねたから……ああ、またイッたのかもしれない。  もう絶頂の感覚すらわからないほどに強い快楽がヘンゼルを蝕んでいた。壊れたように嬌声をあげ続け、聴覚までおかしくなってしまいそうだった。 「ぁンッ……! あぁあッ……!」  やがて、ヴィクトールがヘンゼルを縛る縄をナイフで断ちはじめる。縛り付けた状態でヘンゼルを何度かイかせたあとは、いつものように甘いセックスをしたいと思ったのだった。全ての縄をとくと、ヘンゼルの白い肌に僅か赤黒く縄の痕が残っていて痛々しい。しかしそれも、自分が縛り付けた痕なのだと思うとどこか高揚感を覚えた。  開放されたヘンゼルは、早々にヴィクトールの背に腕を伸ばし抱きついた。縛られてヴィクトールに支配されるのもイイとは思っていたが、やはりこうして抱きついて身体を密着させたかった。キスをして、ペニスを挿れられて、そしてこうして抱きついて、ほんとうに一つになってようで幸せだ。そしてまたピストンをされて突かれると、気持よくて甘い声が零れてしまう。 「ヴィクトール……あぁ、ん……ッ、もっと……!」 「ヘンゼルくん……ヘンゼルくん……」  何度も体位を変えながら、快楽を貪る。乳首を弄られながら後ろから突かれるのは征服されているようでゾクゾクするし、座って向かい合って突き上げられるのは愛されている感じがして幸せ。全身から汗が吹き出て、もう何がなんだかわからなくなって。たぶん恥ずかしいこともたくさん言っている。それでもヘンゼルは意識を飛ばしてしまわないように、少しでも長い間繋がっていられるように必死にヴィクトールに縋り付いた。 「あっ……あ、あぁあ……!」 「ヘンゼルくん……!」  なかで、びくびくとヴィクトールのペニスが震えるのを感じる。中に出された、その瞬間が一番好きだった。感覚としては薄いけれど、胸が満たされるような気がするから。  中に出しても、しばらく抜かないでキスをしていた。呼吸が落ち着いていないというのに夢中でキスをして余計に苦しくなる、でも止められない。 「ヴィクトール……」 「ん……」 「……幸せ」 「うん……」  ヴィクトールはヘンゼルの呟きを耳にすると、唇を離し、ヘンゼルの首元に顔をうずめた。やがて聞こえてきた嗚咽に、ヘンゼルは朧気な意識のなか、苦笑する。おまえ泣いているの似合わないよ、そんな言葉を言う体力もなくて、ヘンゼルはヴィクトールの髪を梳いて優しく撫でた。 「ヘンゼルくん……愛してるよ……愛してる……」  もしも、自分が「悪」と呼ばれるようなことをしてこなければ、ヘンゼルと幸せな未来を築けたのだろうか。ヴィクトールはそう思うと後悔の念に涙が止まらなかった。そもそもどうしてこんなことをはじめたんだったかな……理由は知っているけれど――思い出せない。自分のことなのに、まるで他人事のように……悪事を働きはじめた理由を知っているのにその記憶は全くない。気付けばトロイメライの団長だった……まるではじめから決められていたようだ――  考えてもなんだかよくわからない。ふとヘンゼルの寝息が聞こえてきて、ヴィクトールはふっと微笑んだ。  もう少し……もう少しだけ、彼と一緒にいさせてください――  星の瞬く頃、二人は夢に堕ちる。

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