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***  仕事を終わらせて、ウィルとウェンライトは帰路に就いていた。ストークスは家族が体調を崩してしまったということで、参加できなくなってしまったらしい。 「ストークス軍曹、残念ですねえ。せっかく仲を深める機会だったのに」 「そうだな……また今度、彼の都合の合う時に」 「そうしましょう! あー……でも、ウィルさんと二人きりになれたのは嬉しいかなあ」 「?」  途中で酒を買って、ウィルの家まで辿り着く。その頃には既に19時をまわっていた。 「あれ、今日の日没って何時です?」 「今日は……21時12分だったかな」 「もうすっかり夏ですねえ。おかげでウィルさんもゆっくりできますね」 「ほんとにな」  部屋にはいると、ウィルはぐったりとソファに座り込んだ。忙しい一日だったため、疲れが溜まっている。なにより、オーランドの件で気にもんでいたため、精神的な疲労も大きい。何度かウィルの家に訪れたことのあるウェンライトは、ウィルに断りをいれてから、グラスなどを用意してくれた。グラスに氷をいれて、そのまま酒を注ごうとする。 「あ……まって、水で割ってほしい」 「あれ? そんなにウィルさんってお酒弱かったですか?」 「いや……今日はなんかすぐに酔いそう」 「え~、大丈夫ですよ。酔ったら俺が介抱しますから!」 「ええ……」  結局割らずになみなみとグラスに注がれてしまった酒に、ウィルは苦笑いした。部下に恥ずかしい姿をみせるわけにもいかないから氷が溶け出すのを待ちながらゆっくりと飲もうか……そう思ってグラスを手に取る。軽く乾杯をして、グラスに口をつければやはり今日は調子が良くないらしい、アルコールの香りに咽そうになった。嫌なことを忘れたいという気持ちもあるが……気持ちのいい酔い方もできなそうだ。一旦グラスをテーブルに置こうとしたところで、ウェンライトは止めに入る。 「ウィルさんウィルさん、飲みましょう、ね! 大丈夫、今日は俺しかいませんから!」 「……いや、本当、今日は酔いそうだから」 「むしろ酔いましょう! 酔っているときのウィルさん好きです!」 「……え? あっ、ちょ」  ウェンライトがウィルのグラスを掴む手に重ねるようにして触れ、飲むように促した。ウィルは、しぶしぶ、再び飲み始める。

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