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宴が終わると、再びウィルは先ほどの小さな部屋に運び込まれた。同じように脚を抱えられたため、痛みが増している。もう痛みも精神も限界に達していたため、自分のすぐそばにオーランドが座ってきても、悪態をつくこともできなかった。むしろ、彼のことを視界に入れたくなかった。体をまるめるようにして、ウィルはオーランドに背を向ける。
「なんだよウィル、黙りこくっちゃって。さっきまでの威勢はどうした、そんなに脚、やばいのか」
「……さっさと殺せよ」
「あ?」
「……なんのために俺を生かしている。俺を人質にでもするつもりか」
「なんのためもなにも……何回も言っているだろ、俺はおまえが欲しかったんだ」
「……よくもそんな嘘を」
「嘘?」
ぐ、とこみ上げてくる涙を、ウィルは寸でのところで耐える。しかし、オーランドのそばで知らない少年が歌っていたことを思い出すと悲しくて悲しくて堪らなかった。いつかオーランドとまた一緒に歌えることを願って――この数年、生きてきたのに。
「……もう、代わりいるだろ」
「代わり? 何言っているんだ?」
「俺よりもきれいな声で歌える……あの子。おまえにとって俺はもう不要なはずだ」
「不要だなんて馬鹿を言うなよ、俺はウィルだけを――」
「――いらないんだよ、そんな薄っぺらな言葉! 俺が……俺だけが、こんなにオーランドのことを想って……それなのに、おまえにとっては俺なんて特別でもなんでもなくて……俺は……ずっと、……ずっと、おまえのことを一番に考えていたのに――!」
ウィルは体を起こすと、呆気にとられているオーランドの腰からナイフを抜き取って、自らの首に突き立てようとした。オーランドは慌てた様子でその手を掴んで、そのまま押し倒す。そしてナイフを奪うと床に投げつけ、息を荒げながら言った。
「……なんで、わからないんだよ。俺だってウィルのことを一番に考えていた……教えてやるよ、ウィル……俺が、どんなにおまえを愛しているのか」
オーランドの瞳が、揺れる。ウィルの手を頭上に押し上げ一旦手錠を片方外すと、ベッドボードに繋げて再び手首を拘束し、腕を固定した。
「や、やめ……」
「こうでもしないとまた自害しようとするだろ、このおてんばめ」
「おまえに嬲られて玩具にされるくらいなら死んだほうがましだ!」
「だから……そんなんじゃないって、言っているだろ!」
「……ッ」
オーランドは涙目で叫ぶウィルの顔を掴むと、噛み付くようにして唇を奪った。ウィルは驚いて固まってしまったが、オーランドは構わず唇の感触を堪能するようにして、角度を何度も変えながら重ねる。
「ば、馬鹿にしてるのか……、っ、あ」
離れた瞬間に糾弾の言葉を吐いたウィルの唇を、また、塞ぐ。ウィルはしばらく拘束された腕を動かして手錠の鎖をガシャガシャと鳴らしていたが、オーランドがしつこくキスを繰り返すとやがてそれもやんでしまった。唇を離すとウィルの瞳は濡れ、震えていて、オーランドがそっと頬をなでてやると――静かに瞼が閉じられる。また、唇を重ねてやる。
「ん……ん、」
ずっとずっと……オーランドに焦がれていた。狂おしい想いを胸の中に秘めていた。たった一度の情事をいつまでも覚えていた。待ち望んだ――彼とのキス。一度決別したはずなのに、敵だとみなし憎んだのに。きっと心が弱っているせいだろう……彼からのキスに、心が燃え上がるようだった。体の芯から、震えそうになった。死にたくなるほどに、嬉しかった。
オーランドが体を起こし、ウィルを見下ろすと――ウィルの表情は蕩けきっていて。薄く開いた唇からかすかな吐息を漏らすさまは、あまりにも妖艶だった。理性と本能がせめぎ合っているようにオーランドから目を逸らしているのも、震える睫毛のせいで艶かしくオーランドの瞳には映った。
「だ、だめだ……やめ、……オーランド……」
シャツのボタンが外されてゆく。だめなのに。海賊である彼に抱かれてはいけないのに……。つうっとはだけた胸に触れられて、ぴくんと身体が震えた。期待に震える身体は、オーランドの些細な愛撫でさえも敏感に感じ取って、ほんの少し彼の唇が胸元を滑っただけで身体がのけぞって、甘い吐息が唇から零れてしまう。
「あ、……あぁ……っ」
自分の口からこんな声がでるのかと、驚いた。あまりにもいやらしく、とろとろに溶けた声が。
「んっ……あ、……ぁあ、……は、……ん、あぁ、」
全身を優しく舌で撫でられて、ぐちゃぐちゃに蕩けてゆく。いつの間にか、泣いていた。涙をぼろぼろと零しながら喘いでいた。それくらいに、オーランドに優しく触れられることが嬉しかった。
痛む脚に、そっと触れられる。すうっとつま先からふとももまで撫でられると、びりびりと痛みがはしったが、それ以上に気持ちよかった。オーランドになら、どこに触れられてもいい。脚を開くように命じられ、ウィルは素直にそれに従う。じんじんと熱く疼くそこを……オーランドに弄られたかった。
「あぁあっ……あ、ぁあ……」
指をいれられ、なかを掻き回されると、あまりの快感に脚がどんどんひらいてゆく。みっともない格好だとわかっているのに、勝手に身体が動く。腰がゆらゆらと揺れて、もっともっととせがんでしまう。脚の痛みを忘れてしまうほどに、身体と心がオーランドを求めている。
挿れられたその瞬間に、イッてしまった。彼の熱いものがなかにはいってきて、それが奥に達して、ひとつになったというだけで、おかしくなってしまいそうだった。
「ウィル……」
「あっ……オーランド……、ん、ぁあっ……もっと、……!」
自ら腰を振る。腰を押し付けるようにして結合部をぐいぐいと動かした。もっと彼を感じたい。もっともっと、熱を注いでほしい。
激しいベッドの軋み、手錠の鎖の騒ぐ音。身体が壊れてしまうのではないかというくらいに、感じていた。何回も何回もイッた。
「いって……すき、っていって……オーランド……」
「……っ、好きだよ、誰よりも……ウィル、好きだ……」
「あっ……ぁあっ……! オーランド……好き、……好き、好き……!」
もう離さない、離れないで。無意識にウィルは痛む脚でオーランドの背を抱きしめる。ピストンは激しさを増してゆく。奥を抉るようにドスドスと突かれて、ウィルは身体を捩りながら身悶える。堪らない、彼の欲望を一身に受けて、それで壊れてしまいそうになるのが堪らない。
「あぁッ……! しんじゃう……もう、……あ、ッぁあっ……オーランド……!」
一際強く突かれて、脚の間に身体を割りこませるようにして腰を押し付けられ、なかに注がれる。ウィルは恍惚とした表情でなかが温かくなってゆくのを感じていた。ぴくぴくと小刻みに震える身体を抱きしめられ――目を閉じると、堕ちるように意識を失っていった。
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