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「あっ……あぁあっ……」
ベッドの上で這いつくばり、腰だけを高くあげた惨めな体勢でウィルは鳴いていた。後孔をぐいぐいと指でほぐされ、ひんひんと身体を震わせながら甘い声をあげ続ける。
「ほら……ウィル、もっと脚を開け」
「んんっ……!」
ぱしりと尻たぶを叩かれ、腰が跳ねる。命令されたとおりに脚を開いてゆくと、冷たい空気が濡れた後孔をなぜて、なかがキュンと締まった。
「閉じるな……恥ずかしがってんのか? これから俺にハメられたくない?」
「んん、……挿れて、ほし……」
「そうだろ……? これからウィルの腹のなかにたっぷり精液ぶちこんで孕ませてやるからな」
「あ……っ、!」
いっぱいにされる。自分のなかが、オーランドで。そう考えるだけでイキそうになった。腹がぱんぱんに膨れるまで精液を注がれて、それでも吐くまで奥を突かれて、狂って、狂って――全てが、オーランドでいっぱい。たまらない。
「とろとろになってきた……ウィル、そろそろ欲しいか?」
「欲し……オーランドの、ほしい……」
「よし……いい子だ、ウィル。こっち向け」
肩を引かれ振り向くと、オーランドが笑っていた。俺の檻の中に閉じ込めてやろう――そんな、強烈な劣情を汲んだ眼差しにくらくらした。
この人は、狂っている。自分のせいで狂ってしまった。本人は……それを自覚していない。ただ……純粋に、俺を愛しているだけ。
オーランド……もっと、狂って。もっと俺を愛して。そして、俺を壊して。俺の今まで生きてきた世界を、破壊して。
「ウィル……乗れ。おまえが動け。……できるな?」
「――お頭、お頭! 宴はじまりますよ!」
外から扉を叩く音が聞こえてくる。しかし、オーランドは動くつもりはないらしく、適当にあしらってしまった。……それと同時に、ウィルの脚にずきりと痛みがはしる。日没だ。外には、夜が訪れているらしい。
「う……」
「……日没か。ウィル……大丈夫か」
「大丈夫……」
オーランドに跨がり、膝立ちになると強烈な痛みが下半身全体に走る。しかし、ウィルは気にしないで後孔にオーランドの熱をあてがった。じわりと入り口が熱くなってゆく感覚に、目眩がするほどの快楽を覚える。しばらく、ぼーっとその熱を堪能していた。目を眇め、体中を伝う汗を感じ、自らを焦らし、愉しんだ。
「ウィル……はやく挿れろ……俺もけっこうキツイんだ」
「うん……」
ふ、とウィルは笑う。外はどんちゃん騒ぎ。薄い壁を隔てて、この部屋の中で行われる薄暗く生々しい行為。もう、この世界には貴方と私の二人だけ。そんな錯覚に陥って、胸が満たされる。
「あ……あぁあ……!」
ず、と熱いものがなかにはいってくると、ウィルは仰け反って、下から這い上がってくる悦に耽った。晒した喉は甘い声をあげると震え、伝う汗で光る。
イキそう。もう、イキそう。動いたら、飛んでしまいそう。
「あぁッ!」
怖くて動けないでいるウィルを、オーランドは腰を突き上げて急かした。びくっと大きくしなった身体に、もうひと突き、さらにもうひと突き。
「あッ……は、ぁあッ……!」
「はやく動け……ウィル、いい子だ、……ほら」
「とめ、て……まって……あぁあっ……」
にやにやと笑うオーランドに、ウィルは身体を揺すられながら懇願した。腰が砕けて動けない。気持ちよすぎて、おかしくなってしまう。言うこときくから、お願いだから……声にならないそれを、ウィルは首をふるふると振ってオーランドに訴える。
「よし……ウィル……動いて。……いい子、ウィル」
「はい……」
あまりの快楽に溢れてくる涙。そっと絡められた指に感じる、幸福感。ウィルは目を閉じて、ゆっくりと、腰を動かした。
「あ……ふ、あ……」
ゆるゆると、自分のいいところを探りながらウィルは腰を揺らす。くらくらしてくる。
ああ、はしたない。少し前まで……自分は軍服を着ていなかったか。剣を振るっていなかったか。それが今……こうして、男の上で腰を振っている。皆が敵とみなした、海賊の男の上で。でも――それでいい。そんな今までの世界なんて、オーランドのために捨ててしまえ。堕ちるところまで堕ちて、彼だけを見つめて生きていけたなら……どんなに幸せだろう。
「あっ……! ん、あぁあっ……!」
足りない、もっともっと、オーランドがほしい。ウィルは激しく腰を振り始める。ベッドが激しく軋み、脚が裂けてしまうくらいに痛み。それでも、快楽を求め腰を振る。
「いっ……イク……あっ……もう、……!」
「ウィル……止めるな、俺はまだイッてないぞ」
「で、……も! だめ……あ、……っ……」
下から強く突き上げられた。やばい、壊れる。そう思ったが、ウィルも腰を動かし続けた。ガクガクと身体が揺れ、視界が定まらない上に呼吸も苦しい。脚が本当に痛い。でも、いい。オーランドを感じることが、最優先。
「あ……ッ、あぁ……、あ、……死……ぬ、……もう、だめ……あ、あ……!」
オーランドに抱かれているというだけでこんなにも感じてしまうのだから、もうどうしようもない。このまま死んでも、動かない身体を犯し続けてほしい。腐敗して、脆くなって、ぼろぼろに崩れても、オーランドに抱かれて壊れてしまいたい。なにをされてもいい、彼になら、どんなことをされてもきっと、幸せだ。
「……オーランド……好き……好き……!」
快楽でぐずぐずになって、泣きながら、意識を朦朧とさせながら……ウィルは叫んだ。体中から、心の奥底から溢れる想いを、どうしても言いたかった。
このまま狂って、死んで、……オーランドのことだけを考えながら魂が燃え朽ちたなら、どんなに幸せだろうと。ウィルはイきながら、何度も何度もイきながら――そう思っていた。
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