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「なあ、お願い! ちょっと俺の代わりに行ってきて!」
椛が人魚の呪いの事実をウィルに告げてから数日。通りかかった椛に、下っ端の船員が食事の乗った盆を差し出して、頭を下げてきた。
「ちょっと入ってそれを机に置いてくればいいだけじゃないですか……自分で行ってきてくださいよ」
「む、無理……! だってアレやばいんだもん、マジで怖いんだもん!」
あの日から、オーランドとウィルは船長室に閉じこもって殆どでてこない。船員たちが代わる代わる食事を運んでいっているのだが、中の様子をみた者はみな青ざめて戻ってくる。あまりにも雰囲気が変わってしまったオーランドにおびえているようだ。
この下っ端船員も今日の当番になっていたそうだが、あまりの怖さに椛に頼み込んでいるのだった。まだ当番になったことのない椛は、二人の様子を気にかけていたため、めんどうだと思いながらもしぶしぶ食事を運ぶ係を変わってやった。
盆をもって、船長室の扉をノックする。……わかっていたことだが、返事はない。
「……入りますよ」
ドアノブをまわし、静かに中の様子を覗き込み――椛は息を呑む。扉を開けた瞬間、きつい精液の臭いが鼻をついた。ベッドに座ったオーランドの脚の間に裸のウィルが顔をうずめている。
「んっ……ん、」
「ウィル……美味いか……かわいいな、ウィル……」
「んん……」
ずっと――こんなことをやっていたのだろうか。ウィルの身体にはびっしりと鬱血痕がついていて直視できない。夜中も酷使したのか、脚がかたかたと震えている。凛々しかった彼の面影などどこにもない、あまりにも惨めなその光景――。そして、目元に隈を浮かべ恍惚とした表情でウィルを見つめているオーランドには、狂気しか感じなかった。
「あの……食事……ここに置いておきます」
「おい……ちょっと待て」
「……っ」
二人に聞こえるか聞こえないかの声で椛は告げ早々に部屋を出ていこうとしたが、オーランドに引き止められてしまった。本能的な恐怖を感じ、椛は思わず口元をひきつらせる。
「どう思う……? ウィル、すっごく可愛いと思うんだけど」
「え、」
オーランドはウィルを持ち上げると、自分の膝の上に座らせた。そして、腰を突き出すような体勢をとらせて、椛にウィルの臀部を見せつける。尻たぶをわし掴みして後孔をぐっとさらけ出し……激しい行為の痕をみせつけた。
「……っ」
「みろよ……ウィルのここ……俺専用なんだ。俺の形、してる」
つい先程まで挿れられていました、そんなぽっかりと大きく空いた孔。ぬらぬらとテカっていて、艶かしい。オーランドがそこに指を挿れ、ぐちゅぐちゅと大げさに音をたてながら掻き回すと、ウィルが身体をしならせて、甘い声をあげる。
「あぁああぁ……! オーランド……!」
「気持ちいいな……ウィル。かわいい」
「気持ちいい……あぁっ……そこ、あ、……イク……あぁああっ……」
「可愛い……ウィル、可愛い。ほら、イけ……ウィル」
「オーランド……んんッ……!」
まるで椛がいることなど、気にしていない。ウィルはびくびくと身体を震わせて絶頂を迎えると、甘えるような声を出しながらくたりとオーランドに縋りつく。
「……ッ」
反吐がでる。強烈な不快感を覚えて、椛は部屋を飛び出した。あんなウィルを……見ていられなかった。
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