138 / 353
32
***
少し身体に気怠さが残っている。何度か身体を重ね、さすがに休憩をはさもうかとオーランドが横になっている隣で、ウィルは紙とペンを持ってぼんやりと考えこんでいた。
「ウィル……? それは?」
「ん……歌詞だよ。オーランドのつくった曲につける歌詞」
「へえ……どれ、」
オーランドは興味ありげといったようすで、ウィルを後ろから抱きしめるようにして紙を覗き込む。作った詞をみられるのは正直恥ずかしいと思ったが、どうせ最後にはみられるのだ、ウィルは隠すことなくそれをさらけ出した。
「……おまえ、結構綺麗な字を書くな」
「義父さんに字はしっかり教えていられたからな」
「ふうん……」
『I melt into the blue』からはじまるその詞に、オーランドは眉をひそめた。なんとも縁起の悪い……そう思ったのだろう。
「『Blue』って……海のことだろ。まるで人魚姫みたいなこというじゃないか」
「俺はマーメイドだからね」
「でもべつに、伝承みたいに泡になって消えるわけじゃないだろ」
「……そうだよ、俺は、人魚姫とは違って恋を叶えることができた」
「じゃあ、なんで」
ふ、とウィルは微笑んで振り返った。そしてオーランドに口付けをすると、穏やかに言う。
「……未来のおまえへの、ラブレター。いつかおまえがこれの意味がわかったら、俺は世界一幸せなマーメイドになるよ」
ともだちにシェアしよう!