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「次の島につくのに、あとどれくらいかな」
「二三日ってところだな」
「……ふーん」
夜が訪れ、二人は船長室へ戻る。窓からは綺麗な月が見えていて、月明かりが部屋を彩っていた。外からは船員たちの会話がぽつぽつと聞こえてくる。
自分の命も、あと少しだ。島についたら、死のうと思う。
「オーランド、俺とするの、嫌じゃない?」
「まさか。なんで」
「脚……ほとんど感覚ないだろ。してても楽しくないんじゃないかって」
「いや……おまえが気持ちよさそうにしているのを見ているだけで、俺は十分」
「……じゃあ、今日もわがまま、していい?」
――もう、俺は死ぬから。そのまえに、オーランドとセックスがしたい。
言葉にできないわがままを、キスにのせる。
ウィルはベッドに横になったオーランドにまたがると、ゆっくりと自らのシャツのボタンをゆっくりと外して行った。オーランドの首がこくりとなったのに、彼の欲情がみえる。シャツを全てあけて、前をはだけさせると、オーランドのシャツをめくり上げて、抱きつくようにして肌と肌を合わせた。
「あ……は、ぁあ……」
身体を揺すり、上半身をこすり合わせる。肌が触れ合うだけで気持ちいい。時折乳首が擦れると、ぴくんと身体が跳ねる。やらしいことをしているなと自覚しながらそうしていると、興奮した。
「ウィル……うつむくな。顔をこっちにむけて……」
「う、ん……あっ、」
顔をあげて、オーランドを見つめる。少し物欲しそうな顔をしていたオーランドに、ウィルはそのまま口付けた。オーランドはキスをしながら、ウィルの臀部に手を這わせ、布越しに指で割れ目をこするように穴の周囲を刺激する。
「あ、ふ……」
「ほら……身体を休めるな……揺らせ」
「はい……あっ、あっ……」
顔を見つめながら……そう意識すると、少し上半身を浮かせなければいけなかった。胸元はこすり合うことがなくなってしまったが、下腹部は依然触れ合ったまま。身体を揺らすたびにじわりじわりとそこが熱くなってゆく。
「やらしい顔だな……ウィル。布越しでもここがヒクついてるのがわかるよ」
「あっ、ん、ッ……気持ちいい……オーランド、気持ちいい……」
「いいぞ、もっと腰を揺らせ。ウィル、可愛いよ。可愛い……」
「あっ、あっ、あっ……」
きしきしとベッドが鳴る。ウィルだけが感じているようなこの行為でも、オーランドはたしかに興奮していた。間近で、自分の身体で感じているウィルの顔がみれるから。オーランドの体のことを案じてか、恥ずかしがりながらもウィルは自分の感じている顔をしっかりとオーランドにみせる。羞恥と快楽で紅潮したウィルの顔は、まさしく絶景。指で穴のあたりをぐりぐりとしてやると、唇からため息のような熱い吐息が漏れるのが、酷く色っぽかった。
「あっ、はぁ、……あぁ、あ……オーランド、の……かたく、なってきた……」
「おまえの可愛い顔のおかげだよ」
「んっ……よかった……オーランドも、いいって思ってくれて……あっ、あ、ん……」
「うん……ウィル。最高にいい。可愛い、ウィル……」
「ん……嬉しい、……オーランド……一緒に、気持ち良くなって……ぁ、あ……」
あと何度、貴方と体を重ねられるだろう。そう思うとほんの少しのふれあいが、とても大切なものに思える。生まれでた微熱が、身体を焼き尽くし心を燃やすほどの、甘く、切なく、苦しい快楽と変わってゆく。痛む脚のことなど忘れて、ウィルは腰を振った。気持ちいい部分をオーランドの身体に擦りつけ、蕩けきった顔をオーランドに晒す。
「あ……あぁ……ふ、ぁあ……」
身体を纏う布を剥ぎとって、オーランドのものに臀部をあてがった。堅くなってる、それだけで嬉しかった。なかにそれを挿れてゆくと、ずぷぷ、と生々しい音が耳を掠める。
「……ウィル、大丈夫か、脚……痛くないか」
「大丈夫……オーランド、気持ちいい? ちゃんと感じてる?」
「うん……いい、すごくいいよ、ウィル」
「ね……オーランド……」
ウィルがオーランドの手をとって、自分の胸元にもってゆく。そして、真っ赤な顔をして、かすれ声で、懇願する。
「ここ……虐めて、俺のこと、気持よくして」
「……ッ、ずいぶんと、すごいおねだりするな……どうした」
「……少し、前よりも感じなくなってるでしょ。……だから、たくさん締め付けて、オーランドを気持ちよくさせてあげたい。だから……ここ、触って。虐めて。俺を、何回もイかせて」
はしたなく、いじらしいおねだりはオーランドすらも赤面させた。おずおずと指で乳首をつまみあげれば、ウィルが仰け反って身体を震わせる。
「あぁっ……」
ウィルが腰を振りはじめる。オーランドも胸への刺激を、どんどん激しいものにしていった。ウィルはペニスからとろとろと白濁液を零しながら、それでも自分を追い詰めるようにして腰を振り続ける。はあはあと次第に感覚の短くなってゆく吐息、弄り倒してぷっくりと膨れた乳首、視覚で確認できるウィルの絶頂に加えてオーランドのものをきゅうきゅうと締め付ける肉壁。うねるように動くそこは、オーランドのことも絶頂へと導いてゆく。
「あっ、あぁあ……ッ、オーランド……きもち、いい……? オーランド……」
「やばい、やばいよ……ウィル、ウィル……」
快楽が迫ってくる。ちかちかと視界が白んでゆく。
「あっ……あ……!」
なかで、オーランドのものが震えた。オーランドがイけた、そう感じた瞬間ウィルも限界に達した。ぱたりと糸が切れたようにオーランドの上に倒れこんで、オーランドに抱きつく。
「は……は、……オーランド……よかった……イッた……」
「うん……ありがとう……ウィル」
「オーランド……」
ウィルはぽろぽろと泣きながらオーランドにキスをする。快楽の余韻と、もう少ない彼との時間を哀しむ涙だった。
「ねえ……オーランド、もしも……オーランドから俺の記憶が消えたらどうする?」
「はあ……? どうして?」
「もしも、だよ」
彼のために死ぬことに、未練はない。でも、彼から自分の記憶が消えてしまうことが怖いのは、拭い去れない事実。
「ありえねえよ。おまえのこと忘れるなんて……俺は、ずっとおまえのことを愛している」
「……うん。……うん、」
――その言葉がきけただけで嬉しいよ。呪いに逆らえない運命だとしても、その中で俺は、精一杯に幸せを掴んだんだ。
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