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夢2
***
「……雨」
深い眠りから覚醒すると、雨の音が聞こえてきた。体を起こして外を確認すると……なかなかに激しく雨粒が地面を叩いている。空気も少し冷たい。体を覆うものがない――裸のこの体には、少し寒かった。
「ん……」
「あ、群青……ごめん、起こしちゃった」
僕が布団をずらしたせいか、隣で寝ていた群青も目を覚ましてしまったようだ。群青はまだ寝ぼけているのか眠そうな瞳で僕を見上げてくる。
「……雨、降ってますね……」
「うん、降っている」
「……怖くないですか?」
「え?」
群青も体を起こす。そして、僕を抱きしめてきた。
「……貴方、昔……雨が怖いって言っていたでしょう。雨の音が頭の中を掻き毟って、ひどい孤独感にとらわれるって」
「ああ……そういえば」
ぎゅ、と腕に力を込められると、じんと体が温まってくる。群青の体温は少し高い。犬だからだろうか。彼に抱きしめられるととても心地よくて、胸が満たされる。
「……もう、大丈夫。群青が僕の隣にいるから」
「……本当に?」
「うん……おまえに出逢えてよかった。僕はもう、寂しいなんて思わない。雨の音も怖くないよ」
「……そう、ですか」
僕の言葉を聞くと、群青は今にも泣きだしてしまいそうな笑顔をみせた。ぎゅっと胸が締め付けられる。彼は、本当に僕の幸せを願ってくれていたのだと、そう思って。
「ずっと……ずっと、お側にいます。貴方を護ります」
そう言って群青は、僕に口付けてきた。
雨の音が、どこか心地よい。世界の全てが、美しいと思う。彼の腕に抱かれていると、自分はなんて幸せ者なのだろうと、神様に溢れんばかりの感謝を捧げたくなるのだ。
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