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「柊様……柊様……!」
死んだはずの、最愛の人。再び出逢えた幸せに、群青は貪るようにして彼の身体を愛撫した。いったいどういうことなのか、そんな疑問は消えてしまって、ただ目の前の柊を掻き抱きたい衝動にとらわれていた。
「群青……その服、何……?」
「あ、ああ……洋装です……異国の文化の」
「……そう。群青は僕の知らない時代を生きているんだね……。似合っていて、かっこいいけど……脱がし方がわからない」
ふ、と柊が微笑んだ。肌に触れたいのだという柊の視線。くらりと目眩を覚えて、群青はシャツのボタンを急いで外してゆく。指先が震えて、なかなか外れない。早く柊と身体を交わらせたい。なんとか全てのボタンを外し終えてシャツを脱ぎ捨てると、柊がふわりと頬を赤らめる。
「昔より……体、たくましくなった?」
「……さあ、俺にはわからないです」
「……強くなったおまえに抱かれるの……すごく、どきどきする」
柊が手を伸ばしてくる。群青は飛びつくように彼を抱きしめた。肌と肌が触れ合って、熱くてとけてしまいそうだった。柊の香りを吸い込むと、ぎゅうっと胸が締め付けられて、本当に自分はこの人を愛しているんだ、と実感する。
「んん……、ん……」
唇を重ねる。甘えるような声をだして、柊が群青に抱きついてくる。何年ぶりの口付け。気の遠くなるような時を重ねて、今目の前に誰よりも愛する人。二人は堕ちてゆくように無我夢中で口付けを深めてゆく。
「あ……は、ぁ……」
「柊様……愛してる……愛してます……」
「……泣くな……僕は、ここにいる……群青……泣かないで」
何度も何度も、唇を重ね合わせた。愛を確かめるように、いつまでもそうしていた。
「ん、ん……」
柊の声が蕩けてきたころ、群青はゆっくりと身体を起こす。見下ろした先の柊が、潤んだ瞳でみつめてきて、どくどくと全身の血が茹だるような感覚を覚えた。こく、と柊が唾を呑む。それを合図にするように、群青は柊の脚を掴んで開いてやった。
「柊様……すみません……我慢できない……」
「いいよ……僕も、はやく欲しい……」
はあ、と柊が吐息をこぼす。あまりにも妖艶な表情に、群青の理性は一気に崩れてしまった。かたくなったものを秘部に押し込んで、ぐ、と勢い良く突き上げる。
「あ、あぁッ……!」
びく、と大きく身体を跳ねさせた柊の横に手をついた。はあはあと苦しそうに、でも気持ちよさそうによがる柊をみていると、おかしくなってしまいそうになる。
「柊様……!」
愛おしい。なんて愛おしいんだろう。群青の中で柊への想いが爆発する。その瞬間……一瞬、だった。
「……ッ」
ずき、と胸に裂かれるような痛みがはしった。柊のことを想ったときの甘い痛みとは違う……ひどく、哀しい痛み。
「群青……?」
「……柊、様」
顔をしかめる群青を、柊が心配そうにみつめてきた。彼を心配させたくなくて群青は無理に笑って見せる。
胸の痛みはとれなかった。しかしそこまでひどいものではなかったため、群青は無視して行為を続行した。すぐに柊に夢中になって、胸の痛みはわからなくなる。
「あっ、あ、あぁッ……! 群青、はげし……!」
「……っ、柊様、大丈夫、ですか」
「っ、へいき、あっ、……もっと、あぁあっ、突いて……あぁッ……!」
頭が真っ白になるくらいに、激しく突いた。わけがわからなくなるくらいに腰を振った。優しくしている余裕なんてなかったから。柊もひどく感じているようで、甘い声は次第に艶を増してゆく。きゅうきゅうと結合部が締めつけてきて、群青も限界へ達するのに時間はかからなかった。
「……ッ」
群青がひと突き、激しいものをしてやって、なかにどくどくと精を放つ。柊は仰け反って、目を閉じ恍惚とした表情でそれを受け入れていた。
「柊……様……好きです、ほんとうに、」
「僕も、だ……」
「まだ……動いてもいいですか……久々だから、止まらなくて……」
「うん、いいよ……いっぱい中にだして……」
愛おしさが爆発する。柊がこんな煽りを言うようになったのも、彼が生きているときに何度も何度も体を重ねたからだ。柊の言葉にはいやらしさなんてものはなくて、純粋な群青への愛がこもっている。しかし群青は素直にその言葉に欲情してしまう。
ズキン。
胸が痛む。目の前の柊を愛おしいと思うたびに、心から血が溢れるように痛む。
しかし、構っていられない。千年、亡くなってからも想い続けた人が目の前にいるのだ。ほんの数秒の沈黙さえももったいなく思えるくらい、今までの分を埋め合わせるように群青は目の前の柊を愛したいと思った。
再び、律動を再開する。くたくたになっている柊をぎゅっと抱きしめ、口づけをかわしながら。
夢中になった。柊との情事に群青は酔っていた。チラつく過去の惨劇をかき消すように……群青は今、目の前の柊を抱くことに没頭していた。
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