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*** ――――― ――― ―― 「はぁ、……ん、ぁ……ッ」  濡鷺の愛撫を受けながら、椛はぽろぽろと泣いていた。身体は快楽で蕩けている。それなのに……先程から胸の痛みが止まらない。 「……」  濡鷺はそんな椛の様子に気付きながらも行為を続行している。いくら涙を流そうと……椛は快楽には勝てやしない。それを、知っている。 ――濡鷺は、椛が泣いている原因を、知っていた。  椛が胸を痛めている原因は……椛が、柊の魂を所有しているから。柊の生まれ変わりだからだ。  群青が「柊に会いたい」という望みによってつくりだした、この世界の幻の柊に心を奪われてしまって――本物の柊の魂を持っている椛は、悲しくて泣いている。群青が今、自分の抱いている柊が、偽物であるということに気付かず愛を囁いているということが、悲しくて堪らないのだ。  もちろん、椛はそんなことには気付いていない。柊の魂は群青を愛していても、椛自身は群青に好意を抱いているわけでもなく……誰でもいいから愛して欲しいなんて願いを持っている。柊の魂が、群青意外の者に抱かれることを拒もうが、椛は望んでいるのだから。 「生まれ変わったからといって……また、愛しあえるわけじゃあなかったな、群青。魂ん入れモンがまた可哀想な子や」  望むものをつくりあげてくれる世界。そこから抜け出すことなど……可哀想なこの子らには、無理だ。濡鷺はにやにやと笑って、椛の脚をひらいてやる。 「楽しいねえ。欲に惑わされ苦しむ人間ん顔ん美しさったら」 「……ぬれ、さぎ……」  秘部に熱をあてがわれ、椛はぎゅっと目をとじる。ぐりぐりと肉壁を広げられるように、熱いものが入り込んできて、椛はたまらず仰け反った。ぞくぞくと甘い波が下から這い上がってくる。 「あ、あぁあ……」 「救いなんてあらへんよ。この世界ん幻に呑まれて、死んでいけ」 「あ……あ、ぁ……」  激しく、身体を揺さぶられる。濡鷺のもつ毒。それが椛の理性を溶かし、快楽を増幅させる。頭が真っ白になって、わけがわからなくなって、めちゃくちゃに突かれて。椛は叫び声のような嬌声をあげ続けた。 「あっ、ぁあッ、ひゃ、あぁあ!」 「ほら、もっと……気持よおしいやあげる」 「あ、あぁッ……ぐん、……じょ……」 「……!」  朧な意識のなか……椛は、無意識に名を呼んでいた。ふらふらと手をのばし……助けを請うように。  濡鷺はぴくりとまぶたを動かして、冷たい瞳で椛を見下ろした。そして、ち、と小さく舌打ちをする。伸ばされた椛の手を掴むと、抑揚のない声で言い放つ。 「……こねえよ、あいつは」  がつ、と一際強く腰を打ち付ける。大きく身体を震わせる椛に、また容赦なく、突いて、突いて、激しく突いてやる。 「死んだなら大人しくしてろ柊……これは違う奴の体だ、僕の愉しみの邪魔すんな」 「あ、あ、あ……」  びくびくとなかが痙攣する。濡鷺はぐ、となかに熱を押し込んで、椛に覆いかぶさった。 「……ほ~ら、椛。もっと気持ちよおなろうね。すっぺり忘れちゃえ」  濡鷺はにっこりと笑って、椛に口付けた。

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