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追憶・瞳15

***  椛は12歳となった。椛は成長するにつれて心を閉じるようになっていく。時代も時代なため、椛を厳しく教育していくというのはそこまで間違ってはいないと思う。本当は自分を愛してくれている人たちに気付けていない、そんな椛の弱さが自分を追い込んでいる。しかし……椛はまだまだ子供。誰か、彼を甘やかす人は必要だ。周りにそう言った人間がいないのは……きっと、とてつもなく辛いだろう。 「……おはよう」  本当は、自分がその役目をやるべきだったのではないか。椛に嫌われるようになってから、群青はそう思い始めた。しかし、今更遅い。そしてどちらにせよ、自分は彼に優しくし続けることはきっとできない。椛は成長するにつれて、宇都木の臭いを強めてゆく。 「……今日は雨が降る。傘を持っていけ」 「……わかった」  目をそらしながら、椛は群青から傘を受け取った。  自分から嫌われるような態度をとっていたのに。それなのに、いざ嫌われると、ちくりと心が痛んだ。どこまで自分は馬鹿なのだろう。椛が嫌いなのか、好きなのか。ここまで激しく心が乱れるのは、久しぶりだ。 「……ねぇわ」  傘を持って去ってゆく椛の後ろ姿をみて、群青は呟く。  椛に柊の影をみている時点で、自分には椛を愛する資格などない。自分自身をみて欲しいと言っている彼を、昔の恋人の生まれ変わりだから好きだなんて、そんな残酷なことがあってはならない。  でも……  惹かれてしまう気持ちを、止めることができない。本能で彼を嫌っているのに、魂で彼を愛してしまう。理性で愛することを拒んでいるのに、心は彼を愛することを望む。  愛することができない、愛してはいけない……ぎりぎりと、胸が締め付けられる。  もうどうしたらいいのか、わからない。

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