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「……ぎ、椛……」
「ん……」
体を揺すられて、椛は目を覚ます。はっと体を起こせば、椛はいつの間にか群青のベッドに顔を伏せて寝ていたことに気付いた。ずっと体を腰を丸めた体勢で寝ていたからか、体中が痛い。
「風邪引くぞ、こんなところで寝ていると。自分の部屋に戻れよ」
「群青……」
群青が優しく、頭を撫でてくる。その手からは、消毒液の臭いがした。自分を守ってくれたときにできた傷。ぎゅっと胸が締め付けられるような心地がして、椛は唇を噛んだ。
「群青……ありがとう。群青が来てくれなかったら、僕は……」
「別に……感謝されるようなことしてない。俺はただ、おまえを守りたいから守っただけで、……俺の勝手だ」
「……っ」
守りたい、って思ったのは……自分が柊の生まれ変わりだからだろうか。ずっと自分のことを嫌っていたのにそう思ったってことは……たぶん、そういうこと。椛はそう思って……自分で、傷ついた。群青の真意はわからないけれど……心が、臆病になる。
自分のことを見て欲しい。もっと、この人には自分のことを……
「えっ」
椛は衝動的に、動いた。体を起こし、彼の肩に軽く手をのせて――唇を近づける。
しかし、それは阻まれてしまった。群青が困ったように笑いながら、押し返してきたのである。ぎく、とした。やっぱり自分はこの人に愛されるような人物ではないのかと思って――
「……まだ、早い」
「え……?」
「それ……もうちょっと、背が伸びてからな」
きょと、と椛が目を瞬かせると、群青は椛の頬に手を添え、ふっと微笑んだ。
「……もっと、俺を煽れるくらい、大人になってからだ」
「……、」
かあ、と顔が熱くなった。椛は飛びのけるようにして、群青のもとから離れる。「おやすみ」と言い捨てて、走って部屋から飛び出した。
扉を閉めると、ずるずると座り込んで、両手で頬の熱を冷ます。群青の表情に、ものすごくどきどきとしてしまった。「大人になってから」。言われてみれば、自分の体は群青に比べてずっと小さくて、そして柊よりも幼い。
「……大人になったら……」
つぶやいて、椛はさらに顔を赤らめた。
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