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「なんで手をだしてあげないの?」
「あ?」
休憩をしていた群青に、突然紅が問う。群青はなんのことだかわからなくて顔をしかめた。
「椛様。群青、椛様のこと好きじゃない」
「……いや、これは子供を可愛いって思う「好き」なような気がする」
「えー! なにそれ!」
「たしかにちゃんと椛とは向きあえている気がするんだよ、でも俺の好きはそういう好きじゃなくて」
「群青、不能になっちゃったの?」
「なってねえよ! まだ若いっつうの! こう……頭を撫でたいとは思ってもキスしたいとかは思わないっていうか」
「そんなに椛様、子供かなあ」
うーん、と唸りながら紅が群青の隣に座る。じろじろと群青の顔を覗きこんでは、考え事をするように口をとがらせる。
「……柊様とそんに歳かわらなくない?」
「いや全然違うだろ」
「だって23と17でしょー? 同じよ!」
「6歳も違う!」
「6歳差なんてあってもない同然じゃない?」
「成人の壁はでかい」
「えー!」
つまらなそうな顔をしながら、紅はブーイングをした。つんつんと群青の脚をつつきながら、じとっとした声で文句を言い始める。
「椛様かわいそう。椛様が群青のことどう思っているかくらいわかってるでしょ」
「だから……もうちょっと大人になってから」
「ひどい! 何年待たせるつもり!」
「うるせえよ! 体格差をみろ! 犯罪臭がするだろうが!」
「しないよ~、私よりは椛様のほうが背が高いもん」
意見をゆずる気のない群青に、紅はため息をつく。よいしょ、とたちあがると、ぺしりと群青の頭をはたいた。
「あのね、17歳はあなたが思っている以上に大人だからね!」
「はい?」
男ってやだやだ、と言いながら紅はそのままどこかへ行ってしまった。唖然とその後ろ姿をみながら、群青は頭をかく。椛のことは彼が赤ん坊のころから見てきている。自分が椛に手を出しているところを想像して、なんだか罪悪感がこみあげてきてしまったものだから、「やっぱりまだ早いよなあ」なんて呟いたのだった。
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