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「えっ、これ私に?」
屋敷について、買ってきた髪飾りを紅にあげると、紅は驚いたような表情をした。群青が「椛も一緒にえらんだ」というと、紅は群青と椛を見比べるようにきょろきょろと瞳を動かして、嬉しそうににっこりと微笑む。
「二人で、私のために選んでくれたの? ありがとう! すごく嬉しい」
「前の壊れたやつ、捨てていいからな」
「え、捨てないよ。私の部屋に置いてあるもん」
「いや捨てろよ。俺の血とかついてるぞ、きたない」
「うん、きたないからハンカチーフにくるんである」
「捨てろよ!?」
紅がにこにこと笑いながら髪飾りを見つめている。壁にとりつけてある銀の装飾に自分の姿を映して髪飾りを合わせてみては、二人をみて微笑んだ。紅がここまで喜んでくれるとは思わなかった椛は、なんだか嬉しくてにやけをとめることができない。
「さっそくつけていい? つけるね!」
「あー、ちょっと待て」
紅が髪飾りをつけようとしたところで、群青が止めに入る。きょとんとした彼女から群青は髪飾りをとりあげると、そのまま髪につけてやった。
「……俺がつけてやるって言ったからなー」
「……そっか。ありがとう。似合う?」
「似合うよ。可愛い」
「……へへ」
紅はかすかに頬を染めてはにかんだ。ひらりと着物を揺らしながら椛の前までやってくると、満面の笑みで尋ねてくる。
「椛さま! 似合いますか?」
「う、うん。すごく」
「椛様が選んだんですもんね! 嬉しい!」
「千代さまにみせてくる」と言って、紅はそのまま走ってどこかへ行ってしまう。彼女があんまりにも眩しい笑顔をみせるものだから照れくささを感じていた椛は、ちょっと助かったなんて思ってしまう。
「……紅、喜んでくれてよかった」
「そうだな!」
群青がくしゃくしゃと椛の頭を撫でた。髪がぐちゃぐちゃになる、と椛が抵抗すると、群青が笑い出す。なんだか、幸せだな、なんて。そう思った。
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