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「紅さんって群青さんと付き合っていないんですか?」
「えっ」
群青が文に呼ばれていなくなると、花乃はこっそりと紅に尋ねる。そうすれば紅ははっと顔を赤らめてしまった。
「つ、付き合ってないです」
「どうしてですか? 紅さん、群青さんのこと好きなんでしょう?」
「なんでわかるの!?」
「みていれば」
花乃に指摘されて、紅ははあ、とため息をついた。花乃はそんな紅をみて、くすくすと笑っている。
「群青、私のこと恋愛対象としてみてないと思うんですよね。もう何百年の付き合いになるのに、それっぽいことが全くない」
「……でも、紅さんのことすごく大切だっていっていましたよ」
「えっ、で、でも」
「紅さん以外の女性と一緒にいる未来が想像つかないとも」
「え、えー……そんなこといっても、どうせそういう意味じゃないんでしょ……」
紅はしゅん、とうなだれる。
「……ずっと、群青が幸せな姿を見守る存在でいればいいって思ってました。でも、群青と恋仲になって幸せそうに笑っている人たちをみて……正直羨ましかった。本当は……ただ、みているのが辛かった」
「……伝えないんですか?」
「……伝えません。私はただ……待っている」
ふ、と微笑んだ紅を、花乃は覗き込むようにして笑う。
「私、紅さんと群青さんが離れる未来を想像できません。群青さんと一緒。それって、きっと」
「……へへ。そうだといいな」
花乃が背伸びして、紅の頭を撫でた。紅はくすぐったそうに、はにかんだ。
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