286 / 353

*** 「……今日も無事に生きることができたのを、感謝いたします。どうぞ私に安らかな眠りを与えてください――」  夜、ベッドの上でメルは天にむかって祈りを捧げていた。メルは信者というわけではないが、トレーシーの影響で朝と晩にはお祈りをしている。  メルは考えのほとんどをトレーシーに影響されているため、意識はしていないが少しだけ宗教に染まっていた。悪魔退治をしようとするのも、そのためである。醜い悪魔を、どうか人々から遠ざけたい。悪魔は人間に悪影響をおよぼす悪しき者。 「義父さん……ちょっとの無茶は許してください、ごめんなさい」  トレーシーに心配されたくない。でも悪魔を退治したい。ふたつの想いがゆらゆらと、メルのなかで揺れていた。

ともだちにシェアしよう!