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いつものようにメルは町へいこうと森のなかを歩いていた。今日はトレーシーに心配をかけないようにあまり強くない悪魔にしておこうか……そんなことを考える。強いエクソシストは自分だけじゃない。昨日こそは椛はヘマをしたが、彼だって十分に強いエクソシストだ、危険な悪魔は彼に任せておけばいい。
「……?」
少し歩いたところで、前方に人がいるのを発見する。黒い燕尾服をきた、上品な男。森の中にいるにはあまりにも違和感のあるその男に、メルはもしや……と思い身構える。
「そこのお方……少々話をよろしいですか?」
「……ああ」
声をかけられて、メルは立ち止まる。彼の周囲の空気が、なんとなく違う。中年くらいにみえるが、恐ろしく整った顔立ちは……いよいよ悪魔らしい。
「貴方……赤ずきんで間違いないですね?」
「……赤ずきん?」
「ええ、私は赤ずきんと呼ばれているエクソシストを探しておりまして」
「……」
赤ずきん、と呼ばれてメルは首をかしげる。が、すぐに理解した。自分の髪の色。赤髪だから、赤ずきんに間違われているのだ。なぜこの悪魔が赤ずきんを探しているのかはわからないが……とにかく、人違いである。
「いや、俺赤ずきんじゃないです」
「またまた、赤ずきんはとても可憐な容姿をしているといいますし……これほど特徴が一致しているのに人違いなんてことはないでしょう」
「可憐って……俺がそう見えるわけ?」
「ええ……とても愛らしい。公爵の花嫁にふさわしい」
「――え?」
何言ってんだコイツ――メルの頭のなかが疑問符でいっぱいになった瞬間。ふ、と視界が暗くなった。何が起こったのかもわからない。全身の力が抜けて――メルはそのまま、倒れてしまったのだった。
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