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「神様って……これ? 見ててもらいなよ。きっと神様は俺達の愛を祝福してくれる」 「ばか、いうな……ぁんっ……まぞくは、かみさまのてき、だから……はぁっ……ん……」 「こんなに可愛い反応ちゃってるメルのこと、神様は怒ったりしないよ。顔、とろっとろにしてるんだもん……メル、可愛いよ」 「そんなっ……やめてっ……あんっ、……あん……く、ぅ……ん……」  再び乳首をいじられて、メルは目を閉じて甘い声をあげ続けた。耳元や頬にキスをされながら、乳首をこりこりとイジメられて、おかしくなってしまいそうになる。 「メル……」  控えめに、それでもとろとろに蕩けた甘い声をだすメルが、可愛くて仕方ない。ノアはくしゃ、とメルの髪を撫でると、キスをしようと唇をメルのそれに近づけた。しかし、メルは慌てて手で口を塞いで、キスを拒む。 「だめっ……」 「な、なんで!?」 「キスは、好きな人とじゃないと……だめ……」 「俺のこと好きじゃないの?」 「好きじゃないっ!」 「えー……そんな」  ノアはぶす、と不満気な顔をした。しかし、すぐに笑顔を取り戻すと、再びよしよしとメルの頭を撫でる。 「俺と一緒に暮らして、いっぱいエッチしていたら俺のこと好きになるよ」 「ならない……! そんな、はしたないことされて、好きになんてなるもんか……!」 「すっごく優しくするから。メルのこと、気持ちよくするように俺、がんばるから……メル」 「んんっ……」  すうっ、とノアがメルの腰を撫でる。ぞくぞくっとしてメルは身体を捩った。優しい手つきが、抵抗を溶かしてゆく。メルはぎゅっと目をとじて、必死に心の中でノアを拒絶した。 「好き……メル、……好きだよ」  耳元で愛をささやかれると、脳みそが蕩けてしまいそうになる。ノアは血を吸った相手を好きになってしまう、その体質のせいで自分に恋をしている。それはわかっているけれど、「好き」という事実は変わらない。まっすぐな恋情を向けれられて、どうしたらいいのかわからなくなってしまった。 「ま、って……それ、だめ……!」  ノアがベルトに手をかける。本当に抱かれてしまう、それはさすがにだめだ……メルは慌ててノアの手を払いのけようともがいた。しかし、乳首をきゅうっと摘まれて再び快楽に頭と体が支配されてしまう。 「あぁんっ……」  気持ちよくてまともに抵抗する気が失せる。乳首をこりこりとされながら、メルはあっという間に下を脱がされてしまった。 「んっ……いや、だ……だめ、だめ……」 「えー、夫婦はえっちするもんでしょ? 挿れたいなあ」 「おねがい……ゆるして……かみさまが……」 「また神様? いい加減神様じゃなくて俺をみてよ」  乳首を弄られて甘い声をあげながらも、メルは必死に挿れられることを拒絶した。涙を流しながらふるふると首をふるメルを、ノアはつまらなそうな顔でみつめている。 「……正直、拒絶されると余計に燃えるけど……でも、そんなにメルがいやがるならやめる……」 「……!」 「……ねえ、じゃあ……素股していい? 俺けっこう今、きつい」 「す、また……?」  挿入はされなそう。メルはほっとしたが、聞きなれない言葉にはてなを浮かべる。きょとんとしたメルをみて、ノアはふっと微笑んだ。 「……知らない? じゃあ、教えてあげる。大丈夫だよ、怖くない」  ノアが横になってメルを後ろから抱きすくめる。首筋にちゅ、ちゅ、とキスをされて、相変わらず乳首もこりこりされて。「ん、ん、」と小さくメルが喘いでいれば、ジ、とジッパーを下ろす音が聞こえてきた。 「ひっ……」  尻の割れ目に、熱くて太いものがあてられる。ず、とその先端が尻たぶの間を進んでいって、秘部を擦る。その瞬間、きゅんっ、となかが疼いて思わずメルは腰を跳ねさせた。 「や、……だ……!」 「挿れないって」 「んー……っ!」  きゅううっ、と乳首を引っ張られて、メルは唇を噛み締めながら唸る。その間にも入り口をなんどもノアのものでこすられて、ぞくぞくしてくる。やがてノアのものはずるりとメルの太ももの間に入っていってしまう。 「メル。しっかり脚を閉じていて」 「う、……んんっ、んーっ……」  ノアが腰を振り始めると、竿がペニスと窄みの間を擦る。じゅわっと熱が下の方から広がっていって、ぶるぶるとメルの身体が震え始めた。はじめはゆっくりだったノアの腰の動きは次第に早くなっていって、ぱんぱんと肉がぶつかり合う音がするまでになってゆく。抱きしめられながら身体を揺さぶられて、腰を打ち付けられて……本当に犯されているような気分になって、メルは泣きそうになった。 「は、ぅっ……んっ、んっ、」  でも、気持ちいい。じわじわとした快楽が身体全体に広がってゆく。身体の背面全体に感じるノアの熱が暖かい。 「あっ、あっ、あっ……」  キシキシと控えめにベッドが軋んだ。エッチなことしている、そんな感じがした。自分の首に繋がったロザリオが、目の前で光っている。ああ、神様ごめんなさい。今メルは魔族とエッチしています……頭のなかで、懺悔する。 「気持ちいい? メル……」 「ううっ……やっ、……やぁ、……あっ、あっ……」 「ねえ、メル……気持ちいいよね? メル……メル、」 「きもちいい、……あぁっ……やだ、ぁ……きもちい、い……」  どうしよう、どうしよう。魔族にエッチなことされて、すごく気持ちいい。自分が酷く浅ましく思えて、嫌になる。でも不思議とノアに触れられること自体には、不快感を覚えない。優しく彼が名前を呼んでくれるからだろうか。 「あっ、だめっ、だめっ……」 「イク?」 「いく、……いく、いく……」  何度も身体を揺さぶられて、熱が限界までのぼりつめる。問われてこくこくとメルが頷けば、ノアが耳元で優しげに笑った。 「じゃ、イこうか。メル」 「あっ……」  片手でペニスを握られる。そして、ゆるゆるとしごかれた。そうしながらも乳首をこりこりするのと腰を振るのを、ノアは止めない。 「んっ、んっ、んっ、……」  快楽で、わけがわからなくなる。瞼の裏に、白い火花がぱちぱちと散る。段々とノアの動きが早くなっていって、メルはおかしくなりそうになって首をぶんぶんと振った。それでも快楽は迫り来る。わっ、と頭の中が真っ白になって、びくんっ、と身体が大きく跳ねて。 「あっ……! あぁっ……!」  メルはとうとう、達してしまった。  ノアはぴくぴくと小さく体を震わせるメルの体を反転させて、正面からぎゅっと抱きしめた。絶頂の余韻からくる気怠さでメルはされるがまま、頬をノアの首元に寄せる。よしよしと頭をなでられると気持ちよくて、「ん……」と小さな声が漏れてしまう。 「メル、可愛い」 「……かわいく、ない……」 「結婚しよ!」 「……やだ……」 「……じゃあとりあえず、一緒に住も!」 「それも、いや……」 「なんで!」 「……義父さんが、心配する……」 「うーん」  メルの髪の毛に顔をうずめるといい匂いがして、ノアは思わずすりすりと頬ずりをした。可愛いな、愛おしいな、そんな想いが伝わってくるようなノアの行動に、メルは強く彼を突き放せなかった。でも、家に帰りたい。黙ってここに来てしまったから、今頃きっとトレーシーは心配しているだろう。もう18にもなるメルがある程度夜遊びしたところで、トレーシーは不安になったりしないだろうが、さすがにここに住んで家に帰らないわけにはいかないのだ。 「……じゃあ、時々デートしてここに泊まりにくるのは?」 「……や、だ」 「えー! じゃあ! お友達としてでいいです! 時々一緒に遊んでください! それで時々血を……」 「血は……やだ」 「メルの血を吸わないと、俺、また人を殺さなくちゃいけないんだよ?」 「……」  顔をあげれば、ノアが悲しそうな顔をしている。その表情に、メルは言葉につまってしまった。血を吸われるのは、嫌だ。そして、そのあとに性行為をするのも、嫌だ。でも……それをしなければ、他の誰かが死ぬかもしれない。自分は血を吸われたところで回復するから死ぬこともないし、少しいやらしいことをされることさえ我慢すれば、何も損をすることはない。  ……なにより、真っ直ぐなノアの想いを、どうしても跳ね除けられない。 「……友達、だからな」 「……え」 「……友達として会って、みんなのために俺は血をおまえにやるんだからな……絶対に、結婚とかしないし恋人とかに、ならないから」 「ほんとに? ……これからも、会ってくれる!?」 「……う」  メルが押しに負けてこれから会うことを承諾すれば、ノアが眩しいばかりの笑顔をみせてきた。そんなに、自分と会えることが嬉しいんだ。なんだか、こそばゆい。 「会うよ! 会うから、今日は家に返してくれ!」 「うん、わかった! 俺、メルに会いにいくからね! メル!」  ノアが嬉しそうにメルにしがみつく。そして、ぱっと体を引っ張られ、メルはベッドから降ろされた。ノアが大声でベリアルを呼んでいる。本当に、今日のところは家に返してくれるようだ。 「……また、あしたね。メル」 「……」  にこにこと笑って、ノアがメルを顧みる。あんまりにも無邪気なその笑顔に、なぜか、胸が締め付けられた。

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