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***  ノアの城についてから部屋に向かうまで、メルは緊張しっぱなしだった。ノアがどこかぎこちなく話しかけてくるが、上手く言葉を返せない。これからノアの部屋でいつも以上に甘い時間を過ごすのかと思うと、心臓が口から飛び出しそうなくらいにどきどきした。  部屋に入ると、ベッドまで連れて行かれた。メルはおずおずとベッドの端に腰掛けて、ノアから顔をそらす。改まるとどうしても、恥ずかしかった。 「メル、あの……キス、していい?」 「ま、待って」  手を握られて、問われる。顎を掴まれて唇を奪われそうになって……メルは慌てて制止をかけた。キスを拒まれていることに慣れているとはいっても、このタイミングでお預けをくらってしまったノアは「ええー?」といった残念そうな表情をしている。でもメルは意地を張ったわけでも、照れたわけでもなくて。 「……まだ、言ってないから」 「ん?」 「……俺、」  メルがかあっと顔を赤らめる。しかし、ノアから目を逸らさない。釣られて赤くなっているノアは、目を白黒させて黙り込んでいる。震えるメルの赤い瞳に、目を奪われていた。 「俺、」  唇が薄く開かれる。睫毛がふるふると震える。は、と吐息を零して、メルはかすれる声で、言った。 「……ノアが好き」  そして、メルは自らノアに口付けた。  どさ、と勢いよく押し倒される。そして今度は切羽詰まったような表情をしたノアから口付けられた。  視線が絡み合う。キスをしながら、間近でその熱視線をぶつけ合った。射抜かれるような相手の熱に心を焼かれながら、唇で熱を交わらせる。相手の吐息と焦燥を感じながら、必死に唇を重ね合わせた。 「あっ……」  じわ、と身体が熱くなってゆく。メルはその感覚にぎゅっと目を閉じた。やっぱり、自分はノアとキスをしただけで酷く興奮してしまうようだーー自覚する。ノアのことが、本当に好きなんだな、とも自覚する。キスだけでこんなに気持ちよくなってしまうなんて……この身体は随分と純情だ。  かく、かく、と腰が震え始める。舌を交わらせると更に興奮してしまって、早くもメルはイキそうになってしまった。くちゅくちゅという音が脳内を犯しておかしくしてゆく。ノアの熱に咥内を掻き回され、翻弄されてしまえばもっとぐちゃぐちゃにして、なんて被虐心が湧き上がる。 「んっ……!」  もう一度、瞼をあければまだノアはメルを見つめていた。ぞくぞくした。とろとろになってしまった自分を全部みられていたのかと思うと恥ずかしくなる。至近距離でばちりと目が合うと、その眼光の強さに押しつぶされてしまいそうだ。普段の優しくてへらへらとした彼とは雰囲気がまるで違う、捕食者のような瞳にくらくらした。  ぽろ、とメルの瞳から涙がこぼれ落ちる。気持ちよくて気持ちよくて、熱が落ちていった。ノアの背にしがみついて、はあはあと息を荒げて、ギリギリノアに着いていってはいるけれど……それでも、ノアに蹂躙されてしまっている。もう完全に舌をとられてしまって、こちらの意思ではうごかせない。キスで支配されてしまっている感じが、たまらなく心地良い。  服の中に手を差し入れられると、ぞくぞくと快楽が這い上がってきた。キスで感じきってしまっている身体は、少し撫で上げられただけで従順に反応してしまう。

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