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部屋が真っ暗だ。窓を眺めれば、星が見えている。
空の色が変わってやっと、長い時間ノアと交わっていたのだと、メルは気付いた。何度も何度もセックスをして、色んな体位で愛し合って。すっかり疲れてしまって、どろどろと身体の中で滞留する熱を味わいながら、二人でじっと抱きしめあっていた。
「メル」
「ん……」
「神様、怒る?」
「……怒らない」
「なんで?」
「……エッチするの、悪いことじゃないから」
ノアの腕に頭を乗せるメルは、問いかけてきたノアを甘い眼差しで見つめた。
こんなにも胸が締め付けられて、幸せな気持ちでいっぱいになる行為が罪なわけない。好きな人とセックスをすることが、こんなに満たされることなんて初めて知った。恥ずかしくて、そんな気持ちを口にすることはできない……だから、メルはノアに擦り寄って、「好き」という気持ちを精一杯に伝える。
「……メル、結婚してくれる?」
「……まって、男同士で結婚は、できないんだよ。人間は」
「えー……」
「あの町を離れたくないから……俺は人間の決まりにしたがって生きたいし……」
「うん……」
「……恋人じゃ、だめなの」
「え?」
ぼそぼそとメルがつぶやけば、ノアはぱちくりとまばたきをする。顔を赤らめながら見つめてくるメルに、ノアの胸はきゅんと締め付けられた。
「……ずっと、一緒にいればいいじゃん。こうやって、その……エッチしたりして」
「……うん!」
えへへ、と笑ってノアがメルをぎゅっと抱きしめる。メルが照れながらノアにキスをすると、ノアは幸せそうにはにかんだ。
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