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その日メルは、一日中ベッドの上に寝転がっていた。来客もなく、やることもない。最近は食事をするのが億劫で、食べる量が著しく減っているせいか、体力も落ちている。動く気力もなくて、ぼーっと何もせず時間を食いつぶしていた。
夕闇の色に部屋のなかもそまってゆく。天井が紅く染まって、木の陰がゆらゆらと揺れている。まるで地獄の業火のなかにいるようだ……そんな風に思った。
「――メル様」
「……っ」
ふいに、窓から声がした。ゾワッと悪寒が全身にはしると同時にメルは飛び起きる。声のしたほうを顧みれば――そこにいたのは、ベリアル。
「……結界、はってなかったか……」
「前にも言ったでしょう? 結界を破って入ることも可能だと」
「……何の、用だよ」
「いえいえ、伯爵から、最近メル様の体調が芳しくないとお聞きしまして。メル様の様子が気になってきてみたのです」
「……帰れ」
「メル様」
声が震える。ベリアルの笑顔に、魂を持って行かれそうだ。
「メル様。一度、お屋敷の方へ来ていただけませんか?」
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