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***  夜が深まり、酒場に客が増え始めたころだ。突然、一人の男が酒場に駆け込んできて、慌てた様子で叫ぶ。 「な、なんか……色々やばい!」 「は?」  パニックになりすぎて全く情報の伝わってこないようなことを叫んだ男は、店中の客から非難の目を向けられた。男はわたわたとしながら、軽く呼吸を整え、再び話しだす。 「行方不明者が、またでたんだ。しかも複数人。メルと、それからアーネスト姉妹」 「えっ、メルが!?」 「ああ……教会の結界が破られたらしくて……それに気付いたトレーシー神父が慌ててメルの部屋にいったら、そこはもぬけの殻だったそうで……」  メルが行方不明。それを聞いた瞬間、ノアの表情が強張った。最近メルが悪魔に襲われた、と言っていたことを思い出し、なぜもっとそばにいなかったのだろうと酷く後悔してしまう。しかし男はノアに悔やむ暇も与えない。すぐにまた、新たな情報を叫ぶ。 「で、アーネスト姉妹だけど……いつも彼女たち、夕方には家に帰るみたいなんだ。それなのに帰ってこなくて……で、町の外れに森があるだろう? そっちのほうから女性の悲鳴が聞こえたって、さっき」 「……悪魔にでも攫われたんじゃないか? メルもアーネスト姉妹も」 「さっき悲鳴が聞こえたっていうなら、まだ間に合うかもしれない。みんなで森に行ってみよう」  男の話を聞いた酒場の客たちが、一斉に立ちあがる。マスターに武器となるものを貸してもらえるように頼み、皆、斧や鎌などをもって店を飛び出した。悪魔は危険な存在であると皆知っているが、町人の危機に放っておけなかったのだろう。半ば無謀とも言える特攻を、みんなで試みる。  ノアと椛も慌てて皆を追って森にむかって走り出した。

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