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人間たちの町では、メルをどうするか――ということについて会議が開かれていた。ノアがいなくなってしまった今、自分たちでどうにかするしかない。「メルを殺す」という方向からは動く気配のないその会議をきいていた椛は憂鬱気な顔を浮かべていた。
「本当に……メルを殺すんですか?」
「あたりまえだろ! 人狼だぞ!」
「でも……」
「じゃあおまえはメルの味方するのか? 人喰いの! あいつはもう既に三人殺している!」
「……」
選択肢が極端すぎた。人間の味方か、魔族の味方か。この町の人たちも、メルも好きだった椛にとって、それはあまりにも辛い選択肢だ。しかし、町人たちのメルの殺し方の方法を聞いていると、どうしてもそちらにつきたくないと思ってしまう。
「メルって治癒能力があるんだろ? どうやって殺すんだよ」
「だからノアがいないと……!」
「そのノアがいねえんだろうが!」
「……たしかメルは頭か心臓を潰せば死ぬんじゃないか?」
「俺達がそう簡単に急所狙えると思うか」
「だから数人がかりで! 一気に襲って弱らせれば急所狙えるだろ」
元は一緒に楽しく過ごしてきた仲間なのに。あんまりにも惨くて、椛は想像しただけでも頭が痛くなる。せめて殺すなら、もっとメルにとって楽な死に方を――そう思うが、その方法は椛にもわからなかった。
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