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第34話 Ex: ガムシロボーイ -2-
それから少しして、ミヤの"発情"が始まった。
これになっては一週間はミヤに会えない。
俺はミヤから言われ、「そうか。分かった」と無難に言葉を掛けて踵を返そうとした。
しかし、この日は違った。
ミヤに上がるように言われたのだ。
俺は帰る事を止め、言われるままに彼の部屋に上がった。
こんな時に……オメガのミヤがアルファの俺と長く接触するのは不味いというのに……。
ミヤは自宅暮らしだから、俺達は居間を通り抜けてミヤの部屋に入った。
俺達の歩く音しかしない家。ミヤの両親は現在、勤めの関係上、ここから遠くに二人で住んでいる。
ミヤは実質、この家に一人暮らしなのだ。
ああ、それにしても……このほのかに甘い……良い香りは……ミヤ?
彼の後ろを無言で着いて行き、ミヤの自室に入ると彼は直ぐに反転して俺に質問してきた。
「―……ヨウ、は好きな子が居るって言ったけど……、まだフリーだよね? ね?」
「……? ああ……まぁ……」
"好きな子"って、お前の事だよ、ミヤ。
「―……ぁ、あの、さ? ……ヨウが、俺の……"初めて"になって…………欲しいな、とか……」
「……ミヤ……?」
「ぁ、あのね? 妊娠しないように薬を飲むし、避妊具も用意したから……。……め、迷惑……掛けないから……」
「ミヤ……」
「俺の"最初の人"になって」
「…………」
「ヨウが好き、ずっと……ずっと好きなんだ。
他に好きな子が居るって分かったけど、……どうしても諦められないんだ。……ごめん。
今回だけで良いから、俺を選んで……お願い……」
―……何だ。何だ、このお誘いは。
早口で言い切って、"ぎゅ"っと目を瞑って、俺の洋服の端を握るミヤ。
何だ、この可愛い生き物は!
「ミヤ」と名前を呼べば、"ビクリ"と身体を震わせ不安げに潤んだ瞳を開いた。
「……俺の好きな子、知りたい?」
「…………しり、たい……」
握られた服の端から、ミヤが震えているのが分かる。
本当はどこかに隠れたいのをミヤは我慢して、頑張って俺の前に立ち、答えを待っている。
……俺も覚悟を決めるか。
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