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第38話 ケダモノ達の蜜巣 -1-

―堅苦しい重役会議が終わり、やっと屋敷に帰れば……中庭に俺の私物である四人用テントがポツンと張られていた。 「テント……? まさか……いや、そうだな……"入った"のか」 俺は普段無いそれにワクワクとし、テントの出入り口のチャックを開いた。 すると中から"ふわり"と……。 これは……そうとう濃い"ニオイ"が中に篭っている。 俺のニオイに混ざり、愛しい番のも感じる。 好ましい番の匂いが閉じ篭る、こういう空間……悪くないかもな。 俺はそんな事を考えながらテント内部……オメガの巣に入り、その場で服を脱ぎ全裸になった。 今脱いだ俺の衣服も巣材の一部として機能していく。 そして視線を一点に注ぐ。 そう、俺が見つめる先には………… 俺の寝袋にスッポリ入り、瞳を閉じている番の広武。 このテントは『オメガの巣』だ。 オメガな広武がアルファの俺の私物でガチガチに固めた空間……それが『オメガの巣』。 俺の物……匂いに囲まれると落ち着くらしく、広武は発情期に入るとこうして巣を作る。 そんな今回の巣材はこのテント、寝袋……アウトドア用品、帽子、衣類やタオル、ひざ掛けに大判タオル、枕、愛用のクッション、座布団、ペン類、食器類の一部……。 こうしたテント類は俺の趣味がアウトドアだからで、寝袋とかは広武の物も揃えてあるがここにあるのは俺の物の方だ。 俺の寝袋で蓑虫状態の広武可愛い。 巣材以外には水が入ったペットボトルに携帯食料にクーラーボックス……ここに篭る気満々だ。 ま、後の必要な事柄は母屋を利用すればいいからな。 それらを見てから俺は広武に近づき、膝を折って彼の前髪を横に流して額を撫でた。 すると"ぱちり"と精悍な顔の瞳が開き、茶色の丸い瞳が俺を見上げた。 「正志、待ってた。お帰り」

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