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第50話 蒐集Ω -3-
―それから……
発情期に入ると抑制剤を飲んで、先輩の買った服をベッドの上に自分を囲うように置いて、眠る。
先輩の物に囲まれて発情期を乗り越える……この『オメガの巣行動』は、僕が第二性……バース性が"オメガ"として目覚めてからするようになった。
大好きな先輩の私物に囲まれたと思うと、不安な発情期の心が不思議と落ち着く。
まだフワフワと漂っているような、先輩の良い匂い。
どうしよう……手放せない……一生手放せないと感じてしまう。
運命 に、したくなる。
そうだと良いなぁ、と頭と心が働く。
アルファとオメガの『運命の番論』はあるけど、最近では軽視されてきている。
そして本当は惹かれあうのは強烈なものではなく、とても微かなもので、それが分かるから"運命"だと言われている。
まぁ、中には本当にそういう人がいるのかもしれないけど……。
「先輩、好き……大好き。番になりたいよ……」
涙が零れない様に瞳を閉じてもう一度パーカの匂いを深く嗅ぎ、僕はそのまま眠りに付いた。
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