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02:シリルとジーク2

 素直に、あいしている。って伝えたなら。状況は変わるのか?  シリルのことばに、ジークは深い溜め息をついた。  何度言えばわかる、俺は魔族を好こうとも、好かれたいとも思わない。  ジークの答えに、シリルはジークを真似るように溜め息をついてみせた。  愛ってのは、いいもんだぜ?  ばかばかしい。苦いだけだろ。それも魔族とだなんて。  穏やかに話すシリルに、ジークは苦く吐き捨てる。その様子、これは過去になにかあったなと察し、しかしそれに関して追及はしないと決めた。過去には言及しない。ならば。と未来の提案する。  オレと、甘い愛のはなしでも作り上げてみねえか。  断る。  シリルの提案を、ジークは間髪いれずに一蹴した。しかしシリルに、めげた様子どころか、気にした様子さえ見受けられない。シリルは、ジークの答えを知っていた。  身体は幾度も重ねた。しかし、何度好きだと告げようと想いは受け入れられることはなく、ただ、身体だけの関係が続いていた。そろそろそんな関係に終止符と打ちたいとシリルから出たのが冒頭のことばである。  もとより、アンタの問いはおかしいな。常から嫌気がさすほど素直じゃないか。  呆れたように言うジークに、ああ、それもそうかとシリルは納得する。だったら、押して駄目なら引いてみろ、って言うことだし。シリルがぽつりとことばをこぼす。  暫らく、オレが此処を訪れるのをやめたら、おまえはオレを気にかけてくれたりするのか。  それは、ひとりごとのようにちいさく紡がれた問いだった。ジークは律儀にそれを拾って返す。  俺が他人をいちいち気にかけるとでも?  それは遠回しに、シリルの存在などはジークにとってその他大勢と変わらないのだと言っていて、そこで初めて、シリルは俯いた。  オレにとっておまえは、かけがえのない存在だ。  そう、シリルにとってこの目の前の男は、命の恩人でもある自身の主君や、国の民とは違った意味で、ほんとうにかけがえのない存在であった。他人にそう想われることは、素晴らしいことであるとシリルは思う。ジークは、そうは思わないのだろうか。シリルのなかを疑問が渦巻く。ジークがまた、溜め息をついた。  あんたがなんで、俺をそう思うか教えてやろうか。  ジークの言葉に、シリルは伏せていた顔を上げた。  それまでひたすらに店の帳簿に落とされていたジークの視線が、シリルの瞳を捉える。今日此処へ来てから、初めて目があったなとシリルは思う。  俺が、あんたを気にかけないからだよ。  ジークの発したことばの意味がわからず、シリルは首を傾げる。考えごとをしていたことを差し引いても、シリルにはよくわからない言い分だった。  どう、いう……?  愛や恋じゃない、ただ、物珍しいから気になったってだけなんだよってことさ。

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