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「……!」 「いいですか、レヴィ=マクファーレン……私達レッドフォードはミカエル様の無念を晴らすべく、罪に塗れた水の魔族に罰を与えている。なにも知らないおまえが知った風な口をきくなよ、これは私達に課せられた使命なんだ」  エリスは床に転がる少女の腹を蹴った。それから休む間もなくその痛みと苦しさにむせる少女の口につま先を押し込む。 「ミオソティス……そろそろ靴も汚れてきた。……綺麗にしろ」 「……けほ……はい、エリス様」  ミオソティスと呼ばれた少女は、息を荒げながらも起き上がる。そして、エリスの足をそっと手に取ると、口付けた。 「……は、随分と立派なものですね、レッドフォード……」  レヴィはエリスに奉仕を続けるミオソティスから目を逸らす。そして胸元から棒状の何かを取り出すと、とんとんとそれを額に打ち付けながら俯いた。  ぴちゃ、と唾液の音が響く。時折エリスが無理につま先を押し込んだのか、おえ、と呻き声が混じる。  レヴィはその音を聞きながら、目を閉じた。指を動かすと、手に持つ物体が、ぱらら、と開く。 「おや、レヴィ様……それは一体? 美しいですね」 「ああ……これですか」  エリスはグイグイとつま先をミオソティスに押し付けながらレヴィに尋ねる。まるで自分の靴を舐める彼女のことなど全く興味がないように。 「……なんとなく……持ち歩いているんです。扇というらしいですよ。……綺麗でしょう」  開いた扇面には美しい金の龍の絵が描かれていた。上品な輝きを持つ扇面は、レヴィの顔を隠し、その表情はエリスからは見えない。 「うっ……はぁ、げほ、げほ!」  だからエリスはわからないだろう。その美しい扇面の下で、レヴィがどんな顔をしているのか。  ミオソティスは乱暴につま先で唇を蹴られたために出血していたが、それでも舐め続けていた。唾液を血で赤くしながら、じゃりじゃりと口の中で舌とまぐわう砂の感触を感じながら。 「……ふっ」  レヴィの唇から、吐息が漏れた。その声にエリスはピクリと反応する。どんな言葉がでてくるのかと、それを思ってエリスは微かに唇の端を上げた。 「……はは」 「……?」 「は、あっはははは!!」  てっきり青臭いこの青年は怒りを口にするのかと思いきや、爆笑を始めた。エリスは何事かとレヴィを見やる。  レヴィはぱし、と扇を膝に打ち付けて、身をかがめる。そしてくつくつと必死で笑いを堪えるように腹を抱えながら、エリスを見上げた。 「は、あは……あー、なるほど、レッドフォード……私の知らない事情があったんですね。これは無礼を申し上げました。……いや、失礼。あまりにも感激してしまいまして」 「ほう、貴方にも私達の使命の誇りを理解できましたか。……思った以上に素晴らしいお方ですね、貴方という方は」 「ええ、どうも。……まだまだ私は若いみたいですね……知りませんでしたよ、陵辱を誇りだと、そんなことがあるだなんて……私はもっと世界を知るべきだ」 「まだまだ貴方は当主としての日は浅い。……これからも援助いたしますよ、レヴィ=マクファーレン殿」 「ありがたきお言葉です、是非お願い致します。私の凡俗な頭では理解が難しいと思いますが、レッドフォードの高貴で誇り高い教えをこれからも享受させていただきたい」  二人は穏やかに笑った。  レヴィは立ち上がる。別れの挨拶をしようと思ったが、チラリと視界に入ったものに一瞬言葉を失った。  ミオソティスのスカートがめくれあがっている。臀部を突き出す形で靴を舐めていたからであろう、スカートはショーツが見えるところまで上がっていた。  丸見えになったショーツの下で、なにやら蠢いている。それは細かく中で振動し、時折ミオソティスの尻肉がヒクヒクとひくついている。 「……今日はお忙しいなか、申し訳ございませんでした」 「いえ、ラファエル様の伝言、確かに受け取りました。今後共、よろしくお願い致します」  硬い表情でレヴィが言葉を吐けば、エリスは応えた。そしてニコッと微笑み、ポケットに手を突っ込む。布越しに、ポケットの中の手が動いているのがレヴィからも確認できた。 「――ああっ!!」 「おやおや、どうした、ミオソティス……大きな声をあげて……」  その手の動きに合わせ、ミオソティスがビクビクと体を震わせる。 「あっ……はぁ、ん……んっ!」  ショーツにじわじわとシミが広がっていく。それが何であるかくらい、レヴィにもすぐにわかった。 「……エリ、スさまぁ……どうか……あ、ああぁっ」 「どうした、お客様の前だぞ?」 「おゆるしを……くださ、い……あ、あああ、……くるし……です……」  ミオソティスが自らショーツに手を伸ばす。脇から指を突っ込み、ズルリと蠢く物体を取り出すと、はっきりとその姿がレヴィにも見えた。ブルブルと振動しながら醜悪にうねるそれは、ぬらぬらとてかっている。 「は……やく……イキ……た、い……エリ、すさまぁ……」 「……俺はお邪魔みたいですね」  腰を揺らしながらエリスにすがりつくミオソティスを見て、レヴィが吐き捨てるように言う。そうすれば、エリスは困ったように笑った。 「申し訳ない……レヴィ様……躾が足りなかったみたいで」 「いえ……こんな時間に押しかけた俺が悪いんです、そろそろお暇をいただきます」 「なんだか悪いですね、よろしければ見ていきますか?」 「はは……結構です」  レヴィはにっこりと微笑んで、エリスに背を向けた。出口に向かうと、メイドの格好をした女がドアを開けた。  後ろのから、「よし」という声が聞こえた。それと同時に、じゅぶじゅぶと激しい水音と艷声が聞こえてくる。  レヴィはそれには目を向けずに、部屋を出て行った。  そして扉が締まる音が聞こえると、舌打ちをする。 「結構なご趣味で、レッドフォード」  手に持つ扇を握り締め、ぎり、と歯を鳴らす。ぱし、と強く扇で自分の肩を叩き、立ち止まり、振り返る。  そして何かを呟いたかと思うと、また歩き出した。

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