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夢の漣

――― ―― ―…… 日が昇る。 地平線から、太陽の光が漏れている。 海の漣が、宝石のようにきらきらと輝いている。 「――」 貴方が何かを言っている。 音が聞こえない。 ノイズのように、風と波の音だけが、耳に焼きついている。 「――」 俺も何か言った。 口を動かしている感覚はあるのに、やはり音は聞こえない。 日が昇る。 逆光で貴方の顔がよく見えない。 ただ、微かにわかる。 貴方は笑っている。 ……悲しそうに笑っている。 太陽の光で目が眩む。 貴方が見えない。 風と波の音が止まる。 すべての音がなくなる。 そして、最後にこれだけ、聞こえた。 「……ああ……待ってるよ――」

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