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***  ラズは、バガボンドの時から美人だ可愛いだ散々言われていた。……だが!オレはぶっちゃけその感覚がわからない。笑顔を可愛いと言ったのは、あれ、子供の笑顔を可愛いというのと同じ感覚だ。(天使や悪魔に男女感というものがないというのを承知でいうが)オレが性的に美人とか可愛いとか思うのは女だけだ!  やわらかそうなおっぱいとかサラサラの髪の毛とか、とにかく女は素晴らしい。男の無機質な身体など微塵も興味がねえ。  だから、そう。こうしてラズが色仕掛けしてこようが、オレはなんにも思わねえ。  そのローブの脱ぎ方も女みたいな恥じらいもなく、ばさっとかっこよく脱ぎ捨てる。はい、減点!もっと背中でも見せながらオレをチラチラ見ながら脱げ! シャツの第二ボタンあたりまで外しているが、そのはずし方も手際よく外している。はい、減点!顔赤らめながらもたもた外すのがいいんだろうが!  ダメダメ。エロさの欠片もないぜ。よかった、オレのチ●コは無事ですみそうだな。  ラズが電気を消してゆっくりベッドに乗ってくる。おお、近くで見ると流石に綺麗な顔しているな。いやー、でもこの仏頂面じゃあ何されてもエロくは感じねえよ。  ラズがオレの上に乗っかってきた。……お、あれ。これオレが襲われていね?  いやーまてまて、オレまだケツは未開封だから!え、オレが女側なの!?いや、ラズが女側でも違和感バリバリだけど! 「ねえ」 「え……」  呼びかけられて思わずラズをまじまじと見てしまった。  っていうか今の声、ほんとにおまえの?なんかいつもと違くね?なんかはだけている胸元……あれ、エロくね?なにその表情。微妙に目を細めて、ちょっと悩ましげに息はいて…… 「グラエム……」  ラズが髪を耳にかけた。そして、その綺麗な手を俺の胸元に添えて言う。 「……俺のこと、好きにして……いいよ」   *** 「うわー!!」 「……っ」  いきなりグラエムが叫びだし、あまりのうるささにラズワードは耳を塞いだ。耳元で叫ばれたものだから、鼓膜が破れそうになった。キーン、と奥のほうで音がなっている気がする。 「ば、ばば、馬鹿じゃねえの!! 変な扉開きそうになっただろうがぁ!!」 「うるさい、耳元で騒ぐな」 「だ、だって……何おまえ! つーかよくあんなことやっておいてシラッとしていられるよな!?」 「ああ、ごめん。我慢してるんだよ。本当は全身に鳥肌がたつくらい気持ち悪かった」 「うっせー!!」  ぎゃんぎゃんと喚くグラエムにラズワードは笑う。なんでこんなことをしたんだ、と自分で自分を苛めたくなったが、悪ノリという奴だろう。たまにはこんなのもいいかな、なんて思う。 「グラエム」 「ああ?」 「どう? 勃った?」 「黙れ、寝ろ!!」  投げつけるように布団をかぶせられた。忙しないグラエムが面白くてクスクスとラズワードが笑うと、グラエムが足で小突く。  ああ、くだらない。  こんなくだらないことを、ずっと一緒に、この人としていたかった。でもそれは叶わないだろう。立場上、そう簡単に会うことはできない。  少し悲しいな、そう思いながらも、ラズワードはまどろみに身を任せていった。

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