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――――――
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――……
まるで、自分の体ではないようであった。
「こんなことしているの見つかったら、俺、どうなるのかな」
「……調教の一環だと言い張ろうと思えばできなくもないのでは?」
「……無理だね。俺、調教のときに直接抱いたことなんてないから怪しまれる」
セックスは嫌いだ。欲望のぶつけ合い、肉と肉の交わり。とてつもなく気持ち悪くて、激しい嫌悪を覚える。身体は無理やりソレ用に作り替えられてしまってはいるけれど、心の中ではいつも嫌で嫌で仕方なかった。
「――奴隷のなかで俺が抱くのは、君が最初で最後」
それなのに、今、心の中でこれからの行為に期待してしまっている自分がいる。机の上に押し倒されて、自分の体を抑えつけるノワールの姿をみて、身体がなぜか熱くなってゆく。抵抗の意思が全く湧いてこない。むしろ、早くめちゃくちゃにしてほしい、そんな淫らな欲望だけがふつふつと育ってゆく。
彼のはだけた胸元から見える肌。天井の明るいライトが逆光となって影のできる彼の顔。憂いを帯びた黒い瞳。
「――ン、……ッ」
普段はきっちりとした服装をして、話し方も穏やかで知的で。いつもとは違う彼の姿に心臓の鼓動は激しく高鳴ってゆく。
キスをされただけで、もうすべてがどうでもいいと思うくらいに脳が溶けてゆく。焦らすように啄むようなキスを繰り返され、息が苦しくて堪らない。
「ん、ん……」
ああ――俺はどうしてしまったのだろう。
いつのまに、こんなにもこの人に心を捕らえられてしまったのだろう。この身体は、こんなことをするためにあるのではなくて、大切な人を守るために使うものなのに。剣を振るうために在るのに。だから今まで陵辱されることがたまらなく嫌で、屈辱的だった。でも、今、この人に全てを許してしまっている。いや、自ら身体をひらいている。
「ラズワード……口、あけて」
「……、」
「……舌、だして」
舌を絡め取られてくらくらと目眩がおこる。交わる体内の熱が身体を侵してゆく。
自ら舌を伸ばして、もっともっと欲しいと、そんなことを懇願して。与えられて狗(いぬ)のように悦んで。ああ、壊れていくこの感じが堪らない。乱れてゆく自分自身に酔っている。
騎士として生まれ持ったこの体が、主人――大切な人のために存在するのだとしたら、俺の身体はこの人のためにあるのだろう。この人にならば何をされたって構わない。きっと、この行為はこの人の幸せのための行為だからと、そう俺のなかで認識しているから、こんなにも今、気持ちいいのだろう。
「あっ……、ノワールさま、ノワール、さま……」
なぜ、そんなにもこの人のために。
そんなことわからない。ただ、この人の心の弱さと、涙を見てしまったときから、俺の運命はきっと決まっていた。
「……好き、です……愛してます……」
うわ言のように自分で言った言葉の意味も知らず。
ただその言葉を聞いたノワールの微笑みに、俺の心は満たされてゆく――
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