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――そう、久しぶりに貴方に会って思ったのです。
貴方と俺は、本当に最期の時を共にするんじゃないかって。
だってお互い心のどこかで、お互いのことを求めている。愛とも違う、執着とも違う。ただ、そこにしか見つけられない自分の心の置き場所があるから。
相変わらず貴方は嘘をつくのが下手でした。本当に俺に幸せになって貴方のことも全部忘れて欲しいのなら、もっとポーカーフェイスで話していただきたい。仮面をかぶっていようが、その下の表情が丸分かりでしたよ。
貴方と交わしたただの口約束、俺は忘れていません。貴方は俺のことを想ってハル様に俺のことを幸せにするように頼んだのでしょうが、たとえどんな幸せの中にいてもそれを破るようなことはしません。だから待っていてください。諦めないでください。どうか、貴方自身の幸せに素直になって欲しい。
ただ、もしも――貴方が「生きたい」とそう思ったのなら……
そのときはどうなるかわかりません。多分俺はびっくりするとは思いますが……何故でしょう、今貴方が「生きたい」と言うところを想像して、少し嬉しくなりました。
とにかく、大丈夫です。俺は俺の幸せを見つけます。でも、貴方のことも忘れません。心配しないでください。
だから、もうそんな顔をしないで欲しいのです。
ハル様に、俺の力は大切な人を守るためのものだって言いました。それには貴方も含まれているんですよ。
俺は、貴方の「幸せ」を守りたい。
きっとそれが、俺が存在する意味なのでしょう。
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