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「ああ、悪くねぇな」
エリスはまじまじとラズワードを見つめていった。
いつもよりも高価な服と、カラーコンタクトを使い色を変えた目。ラズワードがこのような格好をしているのはというと、エリスの従者としてマクファーレン家に訪問するからであった。エリスは普段専属の従者がいるのだが、その従者が今日はくることができないということで、ラズワードはその代理となったのだ。即席でちゃんとした従者を雇うことはできず、普段からレッドフォード家にいる奴隷たちから選ぶことになったのだが、マクファーレンの者にそれが奴隷だとバレるわけにはいかない。そこで奴隷のなかでも顔つきが最も普通の人に近い(虚ろな目をしていない)ラズワードが今回のエリスの付き添いに選ばれ、瞳の色で奴隷だとわからないようにカラーコンタクトによる偽装をしているのである。
ちなみに先日エリスがラズワードを呼び出したのもこの件のことだ。
「……絶対バレると思うんですが……」
「佇まいはしゃんとしてるからな、奴隷っぽくはないが……んん、ちょっと顔が良すぎるな、これもつけとけ」
エリスは送迎車の運転手からメガネを奪ってラズワードに掛けさせた(この運転手は予備メガネを常備していることで有名だ)。勿論度が入っているそれは、ラズワードの目には合わずラズワードはふらりと立ちくらみをおこす。
「こ、これ……強……」
「俺がどこにいるかぐらい見えるだろー? ちゃんと着いてこれればいいよ」
「は、はい……」
ぼやける視界の中、ラズワードはなんとかエリスの背中についていった。
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