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「なあラズ、なんで姉さんには手をださねぇんだ?」
ラズワードの頭を掴み、腰を振りながらレイは言う。時折苦しそうにむせるのを無視して、ガツガツと喉を突いてやればその苦しさからラズワードの瞳に涙が浮かび始めた。しかしレイが尋ねてみればラズワードはその瞳でレイを睨みあげ、グイ、とレイの腰骨を押して体を引く。ゲホゲホと咳き込みながら、唇をふき、苛立ち混じりの声で言葉を吐き出す。
「姉さんがそれを望んでいないからだよ。俺が屋敷の人と関係を持っているのは、そいつらがソレを望んでいるからだ。ソレで償いになればいいって思っているから……」
「ふうん? そんなんでさぁ? ほら考えてみろよ、姉さんが……そう、例えばレッドフォード家に嫁ぐとすんじゃん? この家からいなくなるとすんじゃん? ……そうしたら、どうなる?」
「……?」
「――おまえの安息の場所が一切なくなるよ」
「……んッ!?」
グッとレイはラズワードの口に膨張しきったソレを押し込む。ラズワードを壁に押し付け逃げ道をなくすと、顔を掴んで激しく腰をふってやる。苦しい、とラズワードは手でレイのことを退けようとしているが全くそれは意味をなさず、ラズワードは何度もえずきながらレイの欲望を受け止めた。
「もうさ……ねぇんだよ、この屋敷に正常なところなんて!」
「んッ、うッ、げほ、んんッ」
「おまえが全て狂わせたんだからな!」
「んッンッンッ」
「もっとヤッちまえ、ハハ、ワイルディングは終わりさ、お前が生まれたことによってなァ!!」
ビクン、とペニスが震えたのを感じラズワードは逃げようとしたがレイがそれを許さない。ぐ、とラズワードの口の奥にソレを押し込んで、全て出し切るまでラズワードの頭を鷲掴みにし離さなかった。激しくむせ返り床に伏したラズワードを蹴り、レイは乱れた服を整える。ハッと苦しそうなラズワードを嘲笑って、そのまま自室へ戻っていってしまった。
「――は……」
吐き気をこらえ、ラズワードは口元を手で抑える。口の中に広がる生臭い臭いにどうにか耐え、呼吸を整えようと壁に縋り付く。
――おまえが全て狂わせた
「……ハッ……」
クツクツとラズワードは嗤い始める。
「――まったく、そのとおりだ」
咳が止まらない。溢れる涙を拭うのが面倒だ。
「は、ハハ……狂ってる……ワイルディングは……俺のせいで……俺のせいで狂ったんだ……ああ、知らねえよ、勝手にしろ、はは……なんだってしてやる……おまえらが望むなら……」
乾いた笑いと、苦しさだけが理由ではないであろう涙。壊れたように笑って、笑って、笑って……
「……ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい――」
途方もない謝罪をした。
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