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*** 「んー……」  もぞもぞとハルが身動ぎしている。そんな様子をラズワードは隣でじっと見つめていた。早起きだとこういうのが得だよな、なんて思って一人でにやけてしまう。 (犬みたいだな……)  無意識にラズワードはハルの頭に手をのばしていた。なでてみればその髪は思ったよりも柔らかく、くすぐったそうに瞼をぴくりと動かしたものだから、ますますその様子が犬のようでラズワードは小さく吹き出す。すると、ふいに手を引かれ、ラズワードは再びシーツの上に伏すことになった。起こしてしまったのかと思って恐る恐るハルの顔を覗き込んでみたが、その瞬間、目の前が真っ暗になる。 「……ん、」  唇に感じる熱。体にのしかかる彼の全身の重み。 (キスされてる……)  ハルに何をされているのか気付いたラズワードは、そのままゆっくりとまぶたを閉じる。 (まだ、恋人ってわけじゃない、……けど)  自分が彼の傍にいる資格はまだ、ない。そう自覚していたが、今こうしてされているキスがあまりにも心地よくて、ラズワードは自分の欲に敵うことができなかった。ハルの背に腕を回し、全てを彼に委ねる。  とくん、と小さく血が波打っているのを感じた。ふわふわと体中に熱が灯って、すごく気持ちいい。 「……ラズワード……」 「……はい」 「……好き……好きだよ……」 「……、……」  ずるりと首元に顔をうずめてきたハルの言葉にラズワードは僅か首をかしげる。どこか、舌っ足らずに感じたのだ。もしかして、とハルを自分の上から下ろして顔を見てみれば、やはり。 「……寝ぼけてる」  まぶたを閉じたままのハルを見て、ラズワードはため息をついた。しかし、すぐにくすっと笑う。 「……まったく」  ラズワードは静かにはがれた布団をもう一度ハルにかけてやる。そして隣にもぐってみれば、ぐるりと腕を背に回された。もぞもぞと身じろぎしながら、ハルは一番抱き心地の良いポジションを探しているようである。体のあちこちを撫でられてくすぐったさを感じながらも、ラズワードは自らハルの胸元にしがみついてみる。すると、ハルはぎゅうっとラズワードを抱きしめた。 「……好きだよ」 「……俺も、好きです。……ハル様」  どうせ寝ぼけているんだろう、そう思ってラズワードは素直に気持ちを言葉にする。口に出して言ってみれば、心がじわりと暖かくなっていくような気がした。そんな不思議な暖かさが、とても幸せに感じた。 「……ハル様。……好きです。……好き」  自分の声がハルの胸に吸い込まれていく。どうか、聞こえていませんように。そんなことを思いながら、ラズワードが静かにまぶたを伏せたときである。 「……あッ!?」  突然、体に甘美な電流のようなものが走った。なんだと思って神経を集中させてみれば、それは背中のほうを撫ぜている。つうっと、触れるか触れないか、そんなもどかしい感覚でするすると背中を撫でられているのだ。誰がやっているかなんて、見なくてもわかる。ハルが寝ぼけながらそんなことをやっているのだ。 「……ハル様、……ちょっと……だめ、あ、……んっ……」  その暖かで大きな手は、するりと脇腹から腹部の方へ滑り込んでくる。そして臍(ほぞ)をくりくりと丁寧に撫でるのだ。 「ちょ、……やッ……くすぐった……」  あまり大きな声を出してはいけない。そう思ってラズワードが必死に声をこらえていることなど、もちろんハルにはわからない。むしろハルはそんなラズワードを余計に攻めるかのように、手を上へ上へと移動させてゆく。  手はあばら骨をたどり、やがて、胸へ。手のひらで片方の胸を包み込むように、ハルはやわやわと揉み始める。女ではないから胸などないのだが、自分以外の暖かな体温にしつこくそこを揉まれてラズワードは徐々に息を荒げてゆく。 「ん、っ……ん、」  強い刺激はない。ただもどかしい刺激が永遠と繰り返される。ぐっと鷲掴みするようなその手の動きに、まるで自分が好き勝手に遊ばれているような被虐的な感覚を覚え、ラズワードの体温は上がっていく。声を出せず、自分だけが一方的に快楽を享受しなければいけないこの状況がさらにそれを促進させてゆく。 「は、ぁ……ハル、様……ッあっ……!?」  一瞬、ビリっと貫くような快楽が走る。ハルのどこかの指が乳首をかすったのだった。あまり大きな声を出さずにすんでラズワードがほっとしていると、そんな安心も束の間、まるで狙ったかのようにソコをハルは刺激してくるようになった。指の腹でちょんと小さく飛び出した突起を押しつぶすようにぐりぐりと触る。平らな胸板にねじ込むように手を揺すりながら、ハルはラズワードの敏感なところを刺激してくる。 「う、そ……だめッ、ハル様……だめ……」  ラズワードはハルのシャツにしがみつき、必死に声をこらえる。しかし刺激は強まっていくばかり。ハルは指で器用につまんだり、弾いたり、頭の部分をそろそろと撫でてみたり、そこをいじめたおしてくる。 「あッあッ、ん、んん……ひゃ、ぅ……」

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