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「あ、昼間っからやることじゃなかったよなぁ……あはは、ごめん……」
「……ハル様、」
ラズワードはソファから起き上がってハルへ近づいて来た。ハルはなぜか自分の顔がかあっと熱くなるのを感じる。ラズワードの瞳が、冷静なようでどこか熱を汲んでいたから。
ラズワードはそのままハルの胸板にとん、と自分の額を当てる。そして、腕を伸ばし、扉をしめると鍵をかけてしまった。
「え……あの、ラズワード……?」
「……ハル様……これ、どうするつもりですか?」
「――ッ!?」
つう、とラズワードが撫でたのは、すっかり存在を主張していたハルのものだった。いきなりそれを触られてハルはびくりと体を硬直させるが、それと同時に顔を青ざめさせた。
「ま、って。さっきの子、これ気付いてたと思う?」
「さあ。気付いてたんじゃないですか? 俺が何されようとしていたのかもわかったみたいだし」
「さ、最悪だ……女の子にこんな……」
「大丈夫……笑ってましたから……それよりこれ、どうにかしないと……でしょ?」
くすくすと笑うラズワードは、そうして可愛らしい顔をしながらも全力で誘惑しにかかっていた。ハルの肩にしおらしく手を添えて、首筋に唇を寄せる。自らのものを服越しにハルの硬くなったそれに擦り付けると、小さく甘い声を漏らす。
「ら、ら、ラズワード……まて、やっぱりやめにしよう……ほら、見ろこれ、決闘の日結構近いから……その、ラズワードの体だめにしたらまずいし……」
「……ハル様……いや、ですか? 俺……いいんです……ただ、ハル様のこと感じるだけでいいです。……これだけ、俺に処理させてください。……俺、熱くてもうどうにかなりそう……」
「し、処理って、その……」
「……口で」
「なっ……」
ちら、と目が合ったハルは、そのラズワードの熱い眼差しに目眩を覚えた。
俺のためにしたいっていうか……ラズワードが俺のをしゃぶりたい、みたいな……え、まじか、なに、ラズワードってかなり……
「ねえ、ラズワード」
「え、――あっ!」
ハルはラズワードの肩をつかむと、ラズワードの胸を壁に押し付ける。突然そうされて、驚いたように振り向いたラズワードの臀部に、ハルは硬くなったものを押し付けた。
「んっ……」
「抜く前にさ……ちょっとだけ……」
「……、ん! ぁ…… 」
服越しにではあるが、ハルは自分のものをラズワードの割れ目に挟んで、そして腰を揺らし始めた。それはそう、後ろから挿れて、ピストンをするかのように。ぐっ、ぐっ、と硬いそれを押し付けられて、ラズワードは堪らず仰け反ってため息のような熱い吐息を漏らす。びく、びく、と僅かに震えるラズワードに覆い被さるようにハルは全身をラズワードの身体に押し付けて、縋り付くように壁を掻くラズワードの手に自分のを重ねた。
「あっ、あっ、……はる、さま……」
「ラズワード……ごめん、ちょっと我慢、して……」
「い、いえ……もっと、してください……はげしく、して……」
「……っ、こう、か? ラズワード、こういうの、好き……?」
「ぁ、ん……ッ! す、き……! はるさま……もっ、と……あっ、あぁッ……!」
どす、と強く突いてやればラズワードは悦ぶように啼く。たまらない、と言うように額を壁にこすりつけ、もっともっとと腰を揺らす。ハルはそれに煽られるように勢いを強めていった。無我夢中で腰を降り続ける。それに応えるように切ない声をあげるラズワードが愛おしくてしょうがない。
「挿れてないのに……すっごい興奮する……」
「あッ! は、ぁ……はる、さまの……お、っき、……ぁん……」
「……、これで、突かれたい? いっぱい、奥のほう……」
「は、る……さまぁ……」
ラズワードが快楽に瞳を濡らしながらこく、こく、と頷いた。ハルの名前をうわ言のように唇から漏らしながら悶えるラズワードに、ハルは堪らない愛しさを感じた。さらさらと揺れる髪から覗いた耳に無性にむしゃぶりつきたくなって、ハルはそこに唇を寄せる。
「――んッ……!!」
その瞬間、ラズワードがビクッと激しく体を揺らした。体をこわばらせ、ぎゅっと手を握り締め、ぐっと体を仰け反らせる。
「ここ……弱いんだ」
「あっ、はる、さま……だめっ、いっちゃう、から……!」
「いいじゃん。みせて。ラズワードの可愛いイってる顔……」
「……ッ」
ラズワードは耳まで赤くして、俯いた。しかし耳を責め続けるハルからはその表情を伺いみることができる。唇を噛み締め、必死に快楽に耐えるラズワードの顔を。
その表情がなんとも可愛らしいとも思ったが、もっと見ていたいという思いと同時にもっと責めたらどんな表情をするのだろうという好奇心が湧いてくる。ハルはそっとラズワードの胸元に手を這わせ、そしてきゅっとシャツの上から乳首をつまみ上げた。
「ぁあっ……!!」
「……気持ちいい……?」
「……っ、きもち、いい……です、はるさま……あ、あぁっ……」
「……そ、じゃあ……イって。俺の腕の中で……イってみせて」
「はるさま……」
はぁ、はぁっ、と熱い吐息を吐きながら、ラズワードは振り向く。その瞳からぽろぽろと涙をこぼしながら。
「きす、してください……」
「……うん」
「きすしながら……イキたい、です……」
壁をつかみながら振り向く体勢が辛いのだろう。ラズワードは震えながらハルを見ている。
ぎゅうっと胸が締め付けられたような気がした。
ハルはラズワードの頭を掴むと、噛み付くように唇を重ねる。そうすればラズワードは嬉しそうに体の力を抜き、鼻からぬけるような甘い声を漏らす。
可愛い。すごく可愛い。好きだ……本当に、ラズワードのこと、好きだ。
指の先で乳首を弄ってやる。シャツの上からかりかりと爪でひっかいてやれば、ラズワードはびくびくと純情に体を揺らす。腰を打ち付ければその度に絡めた舌がひくひくと動く。
「ん、ん……んっ」
「は、……」
「ふ、んん……んっ、ん、……、ん!、ふ、ぁ……、~~ッ!!」
がく、と急に力が抜けたように座り込んだラズワードを、ハルが抱きとめる。虚ろにハルを見つめながら、ビクン、ビクン、と体を痙攣させるラズワードの顔は、すっかり蕩けきっていた。
「……ハル、さま……」
「……ラズワード……なあ、今度の決闘、勝てるよな?」
「……え?」
「……ずっと、俺の傍に居てくれるよな……?」
ハルの言葉に、ラズワードが目を見開く。なにか、特別なことをいっただろうかとハルが驚いていると、ラズワードは手の甲で目を覆ってしまった。
「……ラズワード?」
「……いて、いいんですか」
「え?」
「俺……ハル様の傍に……ずっと、いてもいいんですか……」
「何を今更言ってるんだよ、ずっとそう言ってきてるだろ?」
ひく、と嗚咽をあげ始めたラズワードは、手をどけてハルを見上げる。そしてぎゅうっとハルに抱きつくと、ハルの首元に顔を埋めて泣き始めた。
「はじめて、だったんです……こんなに……胸が満たされてイったの……」
「……?」
「……セックスは、いっぱいしてきたけれど……今のが一番……幸せだった……挿れられてもいないんですけどね」
ラズワードがふふ、と泣きながら笑う。ハルがきつく抱きしめてやれば、ラズワードも身を預けるようにしてハルにしがみつく。
「ラズワード……好きだ……俺、どうしようもないくらい、おまえが好き。ごめん、言わせて……本当に……愛してる」
「……っ、ハル様……俺も……」
ラズワードは顔をあげる。そして、二人はじっと見つめあって、どちらともなく、キスをする。
――貴方の傍に、いたい。ずっと、ずっと。だから、俺は、強くなる。
「……決闘がおわったら、今度こそちゃんとやりましょう……ハル様」
「……?」
「……セックス」
「なっ……」
静かな声で言うラズワードに、ハル様はひっくり返ったような声で反応する。赤面するハルに反して、ラズワードは穏やかな笑みをその顔に浮かべていた。
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