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エセルバートの部屋をでると、そこで偶々ミオソティスに出くわした。彼女はどうやら洗濯物を干していたらしく、空のかごを持って廊下を歩いていた。部屋からでてきたラズワードをみるなり、驚いた顔をして駆け寄ってくる。
「ラズワードさん……! 今日の決闘、どうだったんですか?」
「ミオソティス……、決闘は決着つかず終いだったけど、俺はずっとここにいられるよ」
「……本当に……? よかったぁ……」
ラズワードの言葉を聞いて、ミオソティスはパッと目を輝かせて、そしてかごを落としてしまう。落としたかごを拾おうとラズワードが近づくと、ミオソティスはそのままラズワードに抱きついてきた。バランスを崩して倒れこんだラズワードの胸に、ミオソティスは頬をすり寄せて微笑む。
「ラズワードさん、これでまた一緒にいられるんですね」
「う、うん……」
嬉しそうにそう言ったミオソティスに、ラズワードはどうしたらいいかと迷った。いつもなら「俺もミオソティスと一緒にいられて嬉しい」とか言ってみたり、抱きしめかえしてもよかったのだが如何せんそれを嫌がる人がすぐそばに。ラズワードは倒れこんだ姿勢のまま自分を見下ろしてくるハルを見上げる。
「ラズワー」
「ちょっとー! そこの女! 私のラズワード様になにしてるの!」
「え?」
不満げにラズワードの名前を呼ぼうとしたハルの声を遮ったのは、突然現れたマリーだった。マリーはラズワードに駆け寄ってくると、ミオソティスを押しのけてしまう。尻もちをついて床に転がされたミオソティスにハルは思わず駆け寄って、そしてマリーに怪訝な眼差しを向けた。
「おい、マリー、なに言ってるんだよ! 『私の』ってなんだ!」
「ラズワード様素敵ー……かっこいいー……」
「馬鹿野郎離れろ! ラズワードは俺の……」
「ラズワード様、一つ提案です! 私と結婚しましょう! きっとお父様もお許しになります! ほら、そうすればお兄様とも一緒にいられて一石二鳥!」
「なにが一石二鳥だ! おまえと結婚してラズワードにどう得になるんだよ! あとラズワードと結婚するのは俺だ、っていうか何その急な態度の変わりよう! ラズワードまたおまえ俺のみていないところでたらしこんだだろ!」
うわ、こっちに飛び火が来た、と面倒くさそうにラズワードは苦笑いする。マリーのところを優しく自分の上からどかして、ぽかんと自分を見つめているミオソティスに手を貸そうとしたとき。
「ラズワード、どうしたの。ふふ、聞いたよ。これからもここにいられるんだって?」
「姉さん」
次から次へと現れる新たな登場人物に流石にラズワードは眩暈を覚えたが、今現れたアザレアが何かめんどうごとの発端になるとは思えない。少しだけホッとしてラズワードはミオソティスを立たせてあげてからアザレアの元へ歩み寄る。
「うん。心配してた?」
「ううん。だってラズワードは強いもの。私の弟でしょう?」
「……そうだね、俺も姉さんみたいに強くなれてきたとは思うよ」
「ふふ、流石。頼もしいね、ラズワードは。モテモテなのも納得しちゃうなあ。こんなにみんなから愛されちゃって」
アザレアはラズワードを中心に群がっている面々を見渡して楽しそうに笑った。なにやらラズワードと並ぶと見栄えの良い華やかな女子たちに嫉妬の炎を燃やしていたハルも、その笑顔を見て脱力してしまう。そんなことよりもアザレアからよしよしと撫でられて照れ臭そうにしているラズワードを可愛いと思いつつガン見することで忙しかった。
「んだよこんなところで集まってんじゃねぇ、通行の邪魔だ」
またもや新しい声。次は誰だ、と振り返ったラズワードは一瞬固まった。
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