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もうちょっと、いじめてみたくなった。ハルはローターを取り出すと、それをラズワードに見せつける。
「ラズ? 俺なんで怒ってるんだっけ?」
「……ハル様以外にイかされたからです……」
「そ……だから、俺の手以外でイッちゃだめだよ」
「……どういう……」
「おもちゃで感じるの、だめだからね」
「……え、」
ローターのスイッチを入れると、ブゥン、とモーター音が響いた。指で挟んでぎゅっと引っ張った乳首の頭にそれを近づけてゆく。息を飲んでそれの様子を見つめるラズワードは、ローターが近づいてゆくたびにびくびくと身体を揺らした。
そして、先がほんの少し、触れる。
「ひゃ……っ」
「ラズ、感じるの、だめ」
「む、り……」
「だめ」
一気に、ローターを乳首に強く押し当てる。
「あぁあっ……!」
「らーず。えっちな声でてるよ?」
「ごめんな、さい……!」
ぐりぐりとローターで乳首をつぶしてやると、ラズワードはのけぞって甘い声を漏らした。しかし笑ってハルがラズワードを見つめてやると、ラズワードは瞳を濡らし、そして声を出さまいとうつむき、首元でたぐまっているカットソーを唇で噛んだ。
「んっ、……ふ、……」
「気持ちいいの?」
「んんっ……」
ふるふるとラズワードが首を振る。ローターを押し込むたびに跳ねる身体、ふーふーと快楽を逃がすような息づかい。もじもじと動く脚とくねる身体がひどくいやらしい。
ちらりと鏡を見る。自分に抱かれ、その中で身体をくねらせるラズワード。ハルのなかで、ぞくぞくと嗜虐心がこみ上げる。
ローターをもう一つとりだして、それも乳首に押し当てる。縄に挟んで固定してやると、ラズワードが目を見開いてぷるぷると首を振った。足の指がシーツを掻いている。唇に挟まれた服が唾液に濡れている。限界が、もう近い。
「ラズ、早いね。まだこっちあるじゃん」
「んっ……、や、はるさま、はる、さま……」
ハルがラズワードの太ももの間に手を差し入れると、ぎゅっとそこに力が込められた。はぁはぁと今にも泣き出しそうな息づかいが荒んでゆく。それでもローターは非情に作動し続け、ラズワードを責め立てている。
「ふっ……う、ぅ……」
ハルが手をやわやわと動かした瞬間、ぽろりとラズワードの瞳から涙がこぼれた。さすがにびっくりしたハルがその顔を覗き込めば、きらきらと濡れた瞳と視線が重なる。訴えるようにじっと見つめられ、ハルの胸はどきりと高鳴った。
「はる、さま……おねがいします……キス、してください……」
「……ラズ、」
「……ごめんなさい……イッちゃう、イッちゃいます……いや、です……おもちゃで、イッちゃうの……はるさま、キスで、イかせて……」
「――……」
気づけば体を反転させて、ラズワードを押し倒していた。縄で縛られ身動きのとれないラズワードを腕で閉じ込めて、全身で覆いかぶさって、そして口付けた。舌を突っ込めばラズワードは必死にそれに応えて、絡めてくる。腕を使えない分、脚をハルに絡めてくる。
「んっ、んんっ」
ぴくん、ぴくん、と儚く揺れた身体と、ぎゅっと力の込められた脚。舌を引き抜けばラズワードはもの寂しげに見上げてくる。
「はるさま、もっと……」
「……だめ、お仕置きにならない」
「……いじわる……」
きゅんっと揺すられた心臓に静止をかけて、ハルはラズワードを再び抱きかかえた。ベッドの端まで移動して、鏡のよく見える位置までもっていく。そして、ラズワードの下半身を纏う布をすべて剥ぎとってやって、太ももを掴み大きく開かせた。
「やっ、ハルさま……!」
「前、見て」
「いやです……こんな格好……!」
「見て」
「……ッ」
鏡に写る、ひどくいやらしい格好をした自分。ハルに抱かれながら、胸元を赤い縄で縛られ、乳首はローターで刺激され、脚は大きく開いている。そして、丸見えになった穴が、ひくひくと動いていた。
「ゆるして……はるさま……」
「痛くないように濡らすからな」
「……んっ、つめた……」
ハルはラズワードの脚をぐいっと引いて、腰を突き出させた。そしてその上にローションをたっぷりと垂らすと、乱暴に手のひらでのばした。ぬちゅぬちゅと卑猥な水音が響く。敏感な部分全体を手で揉みしだくようにローションをすり込んで、そうすればラズワードは大げさなくらいに甘い声をあげだした。
「はぁ、あぁあ、だめぇ、やぁ……!」
「……すっごく気持ちよさそうな声だすんだね、可愛い」
「だって、だって……」
はるさまの、手、と小さく囁くと、ラズワードは甘えるようにハルの首筋に唇を寄せた。ちゅ、ちゅ、と小鳥のようなキスを繰り返して、そして同時に唇から熱い吐息を漏らす。カッと一気に頭が茹だるような熱に襲われて、ハルは我慢ならず噛み付くようなキスをした。手の動きはさらにはやくなっていく。乱暴なキスは唇を唾液で濡らして、ただただ二人を高めていった。
「あっ、はぁっ、」
「ラズ、……ラズ」
「はる、さま……」
腰がゆらゆらと揺れる。部屋全体の温度が上がったよう。身体が熱くて熱くて、どことなく息苦しくて、でもその感覚がすごくいい。息継ぎも惜しいほどにキスに夢中になって、激しい水音に心を急かされて、頭を侵食する興奮に逆らえない。入れて入れてと誘ってくるその穴に指を突っ込んで、柔らかくなるまでそこを思う存分ほぐしてやる。
「すごい、ラズ……ここ、きゅうきゅうっていってる」
「あっ、んんっ、はるさま、もっと、もっと……」
「ん、いっぱい柔らかくしてあげるからね」
「んぁ、や、んん、ぁん……」
指を折り曲げて、いいところをごりごりとこすってやった。そのたびにぴくん、と跳ねる白い身体に浮き出た汗が伝い落ちてゆく。キスを求めてはくはくと揺れる唇に誘われて、ハルはそこに唇を近づけたが、すんでのところでピタリと止まる。間近で自分を求めてぐずぐずになっている彼をみることに、ひどく興奮を覚えたのだった。
突き出された腰にずっぷりと指を突っ込んで、指の動きを早めてゆく。ぐちゅぐちゅと水音が激しくなっていく。手の動きなんてそんなに大きくないのに、ラズワードの腰は大げさなほどにハルの手の動きに合わせて大きく揺れていた。開いた脚の先、宙ぶらりになった足首が、ぷらぷらと力なく揺れている。
「あぁ、はぁあ、やぁ……」
ため息のような声。蕩けてしまいそうなその甘やかな響き。くたりとハルの体に寄りかかり、胸板に頬を寄せ、全てをハルに預けて、ラズワードは快楽を受け止める。
「んっ……はるさま、いく……いきそう、です……」
「うん、ラズのお尻の穴、ぎゅうぎゅうって俺の指締め付けてくるよ」
「やだ、いわない、で……はるさま、もう、ゆび、いや、です……」
「なんで? 気持ちいいでしょ?」
「いくの、ゆびじゃなくて、はるさまので、いきたい、です……」
「んー、どうしようかなー」
にこ、とハルは笑った。そして、ひとつ、道具を取り出す。ラズワードはそれをみると、びくりと身体を揺らし、不安げにハルを仰ぎ見た。
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