204 / 343

14(1)

 少年は初めて立ち入る飼育場に息を飲む。ずっと奥まで続く牢の列、その中から聞こえてくる金切り声。年端もいかない少年には過激すぎるであろう調教がなかで行われていたが、性的興奮よりも恐怖が勝って少年は怯えるばかり。話には聞いていたが、ここは思った以上に残酷な場所だ。 「今日おまえにやってもらうのはそう難しいことではないよ」 「……まさか、調教……」 「いいやそれについては今度教えてやる。今日はもっと単純なことだ」  バートラムは少年を先導しながら話している。各々の牢の中の様子を覗いては、時々満足気に笑っていた。  たくさんの牢を横切って辿り着いたのは他の牢とは隔離された牢。中には一人の女が磔にされている。 「先日得意先から注文をもらってな、少し変わった嗜好の奴隷が欲しいらしい」 「変わった……?」 「まあ、簡単に言ってしまえばダルマが欲しいだとか」 「……?」 「おまえにつくって貰おうと思ってなぁ……とはいってもおまえはまだ子供で腕力がないから上手くできるように用意してやったぞ」  そういうとバートラムはずっと手に持っていた鞄のファスナーを開け出した。何が出て来るのかと覗き込んだ少年は、ぴくりと身じろぐ。  まさか、 「ダルマの意味はわかるな」  鞄からでてきたのは、チェーンソーだった。 「えっ……あの、ダルマ、って……」 「なんだか生きている肉奴隷が欲しいとか言ってたなぁ……そうだ、手や足が邪魔だとか」 「……切れ、ってことですか」 「そう言っている」 「……麻酔は?」 「なしだ。奴隷にそんな薬使ってやる必要ない」 「……ショック死するかもしれないじゃないですか」 「そうしたら別のヤツを使え」 「……そちらのほうが非経済的です」 「……わからないか」  バートラムがガシッと少年の頭を掴む。 「――おまえのためにやっているんだよ。これは奴隷のじゃない……おまえの調教だ」 「……え」 「さあ、やれ……この奴隷が何を言おうと、何が何でも手足を切り落とせ!」  バートラムが無理やり少年にチェーンソーを持たせる。そして、ドン、と強く少年の背を押して女の前に立たせた。  少年の額から、冷や汗が流れ落ちる。強いバートラムの視線を感じてチェーンソーのスイッチを入れれば、手から強い振動が伝わってくる。 「いやあああああああ!! やめてえええええええええええ!!」 「……ッ」  恐怖に狂ったように叫ぶ女から、少年は思わず目を逸らした。このまま彼女を見つめていたらこちらがおかしくなってしまいそうになったから。それでも震える足でゆっくりと近づいていく。回転する刃を、その腕に。目を見開いて女は暴れだし、唾液を飛ばしながら金切り声をあげている。

ともだちにシェアしよう!