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***  夕方になり、ラズワードはマクファーレンの屋敷に来てしまっていた。ハルへの後ろめたさで胸のなかはいっぱいだった。ここのところ、自分はハルを裏切るようなことばかりしているすべて、ノワールのために、と。ハルへの想いとノワールへの想いはまったく別物であると、ラズワードのなかでは思っているのに、ノワールのために動いてしまう自分がひどく恐ろしく思えた。ノワールへ抱くこの想いは恋情とは違う――それでも、ノワールのためにハルと一緒にいる時間を割いているということが、ハルへ申し訳ないと思った。 「いらっしゃい、ラズワード」  玄関まで出迎えてきたのは、レヴィ本人だった。物憂げな表情を浮かべるラズワードを一瞥すると、面白そうに笑う。仰々しく大きく手を広げ、屋敷のなかを指すと、わざとらしい口調で言った。 「ようこそマクファーレン家へ。ゆっくりしていけよ」

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