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*** ―――――― ―――― ――― 「え、いや……染師? とかいいって……なんかお堅そうでいきたくない……」 「いいからレヴィ、来なさい! そろそろ挨拶させないと」 「うえー! 離せよー!」  レヴィが生まれたのは、天界のなかでもあまり栄えていない、はずれのほうにある貧しい村だ。都会のように発展もしていないし、貴族なんかも住んでいなくて小さな家だけが並んでいて……それでも、村人は優しく皆幸せに暮らしていた。レヴィは大人たちに叱られながらもイタズラばかりする、所謂悪ガキだった。魔術なんて知らない、そもそも魔力をそこまで持っていない。勉強したところで何かに使うわけでもないし、レヴィは魔術の知識はほぼゼロに等しかった。  ある日、レヴィは父親に引きずられるようにして、付き合いのあるという染師の家に連れて行かれた。貧しい家ばかりの村のなかでは少し大きな屋敷のこの家をみた瞬間、レヴィは顔をしかめる。金持ちイコール性格が悪いという勝手な印象を抱いていたからかもしれない。しかし実際に屋敷からでてきたのは人の良さそうな、少し歳を召した男だった。着物、というのだろうか、自分たちの来ている服とは少し形の違う服を着ている。彼はしばらくレヴィの父親と談笑したのち、レヴィに気付くとにっこりと笑って言う。 「ああ、君がレヴィ君。よく話を聞いているよ、ずいぶんとやんちゃな子みたいじゃないか。うちにもね、同じくらいの歳の娘がいて。今から呼んでくるから、待っていてくれ」  自分のことをどんな風に話しているんだ、と父親にレヴィが悪態をついていると、男が屋敷の奥から、一人の少女を連れてくる。レヴィは彼女をみて、ビシリと固まった。 「この子はね、ミオソティスっていうんだ。いやー……正直、私よりも染め物の腕がある。この歳でだからね……才能があるんだ。将来が楽しみだなあ」 (か、かわいい……!)  青い着物が似合う、色白の美少女。ふわふわの黒髪を揺らし、ミオソティスと呼ばれた彼女はレヴィをチラリとみて、一言いった。 「……何、この冴えないガキ」 「……はい!?」  第一印象は最悪。これが、レヴィとミオソティスの出逢いだった。

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