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「……また来てたんだ、あんた」
「来たくて来てんじゃねーよブス」
「ほんっとガキ。同い年とは思えない」
レヴィは父がミオソティスの家に行く度に、連れて行かれた。ミオソティスはおてんばという言葉が似合うような気の強い少女で、レヴィにいつもきつくあたってきた。父親に対する態度も同じようなものだったため、恐らくはレヴィか嫌いというよりはそういう性格なのだろう。いつもしかめっ面で、あまり笑わなかった。ただ、レヴィはそんな彼女に幼い恋心を抱いていた。一目惚れ、だったのかもしれない。ミオソティスは口も悪く、可愛げは全くなかったが、これはまたレヴィの子供ところで、顔が可愛いという理由で彼女を嫌いにはなれなかった。口喧嘩をするのも、それほど嫌いではなかった。
「何、これ絵描いてんの」
「そうだけど」
「ふーん、下手くそ~!」
「勝手に言ってれば。あんたみたいな馬鹿には絵なんてわからないんでしょうから」
ミオソティスは絵を描いていることが多かった。幼いながらも、大人に引けをとらないような絵を、いつも描いていた。レヴィはどうしても素直になれなくて、それを貶すことが多かったが、本当はいつもその絵に見惚れていた。
その日、ミオソティスが描いていたのは、花の絵だった。小さな、青い花がいっぱいの絵。
「その絵、なに」
「花」
「なんの花かって聞いているんだよ」
「……見てわかんないの? 忘れな草だけど。私の名前の元になっている花」
ミオソティスはそこまで言って、俯いてしまった。じっと黙りこんでしまうものだから、さすがにレヴィも心配になって彼女に近づくと、彼女は描いていた絵をぐしゃぐしゃと丸めてしまう。レヴィがぎょっとして固まっていると、ミオソティスはその丸めた紙をレヴィに押し付けてきた。
「……あげる」
「え、」
「……だから、それ、あげる!」
「え、な、なんだよ」
まだ描いている途中の、ぐしゃぐしゃになってしまった絵を押し付けられて、レヴィは戸惑う。ミオソティスは突然立ち上がって走り去っていってしまって、ますますレヴィは混乱してしまった。
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