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「あら、おかえり、ラズワード。ハル様が首をなが~くして待っていたわよ」 「……」 「ラズワード~? きいてる? ラズワード!」 「……あっ、姉さん……ただいま」 「……? ラズワード? 大丈夫?」  レッドフォード邸に帰宅したラズワードは、アザレアの出迎えもぼんやりとして聞き逃してしまった。アザレアはあまりのラズワードの様子に不審がって、じっと顔を覗きこむ。  ラズワードはそんなアザレアにへらっと疲れたような笑顔を返すと、ふらふらと自分の部屋に向かっていった。アザレアと話している余裕などなかったのである。  リリィと決闘をしたとき――ラズワードの心の中で、ひとつの決意が生まれた。誰のために生きるのか、誰を愛するのか。その決意は――ラズワードの全てを破壊する。それを、告白することが……ラズワードは怖かったのだ。 「ちょっとー、ラズワード! ハル様のお部屋に行ってあげてね~? 話があるって言ってたよ~?」 「えっ……は、話……?」  部屋に行って布団をかぶって眠ってしまおう――そう思っていたラズワードに、アザレアの言葉が鉄槌となって襲い掛かる。  ――このタイミングで、話?  まだ、すべてに別れを告げる覚悟ができていないラズワードは、ハルの部屋で待ち構えている出来事を想像して眩暈を覚えた。

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