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「はる……さま、……」
干からびてしまいそうになるくらいに、ハルはラズワードを抱きつぶした。ラズワードもすっかり体力の限界なのか、くたりと力なく横たわっている。全身が体液でべたべたになってしまったからシャワーを浴びたいところだが、その体力すらもない。
ハルが腕枕をしてやれば、ラズワードはとろんと瞳を蕩けさせながらハルの胸元にすり寄ってきた。秘部からとろ……と精液が零れ落ちるたびに「ん……」と甘い声をあげて身じろぐ姿は、まるで子猫のようだ。
「……誤算だったな」
「……? はるさま?」
「……こうなるつもりはなかったんだけどな」
「どう、されましたか……?」
ハルはラズワードの髪の毛を梳きながら、独り言を呟く。脈絡のないその言葉にラズワードは首をかしげるも、ハルはラズワードにその言葉の真意を語ろうとはしない。
「……ラズ、可愛い」
「……ハルさま」
――ハルは、この旅行ですべてを終わらせるつもりでいた。
ラズワードが自分以外の人に惹かれていることに、気付いていた。しかし、ハルの中に、「ラズワードを引き留める」という選択肢は存在しなかった。在ったのは、「どうやって自分の気持ちに整理をつけるか」という迷いのみだった。
だから、この旅行で――ラズワードへの未練を晴らそうとしていた。自分のなかにあるラズワードへの想いをこの一週間で絞り切ろうとした。
――誤算だった。
ラズワードに触れれば触れるほどに、想いが消化されてゆくどころか、強くなっていく。ラズワードを手放したくないという想いが、強まってゆく。
ハルは、自分がそんな風になるなどと夢にも思っていなかったのだ。何かに執着したことなどなかったから、本当に手放したくないものが自分の傍から離れて行きそうになったとき――自分がどうなるか、想像もつかなかった。
「ねえ、ラズ」
「……はい、」
「……俺も、自分のことがわからなくなってきちゃった」
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